母と息子のセンチメンタルジャーニー

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前席に取り付けられたモニターでテレビのプログラムや映画を見続け、たまに居眠りしている間に、飛行機はスムースにロスの飛行場に着陸する。

ロスでは車椅子を頼まないことにしていたので、私たちは他の乗客と共にゆっくりと飛行機の出口に向かう。

そこで驚いた。身障者を迎える人たちがゾロリと20人ほどそれぞれ椅子を前に立ち並んでいる。今まで私が見た身障者たちは、飛行機一台に約4,5人ほどだ。いきなり、どうしてこんなに身障者が増えたのだろう。それも少ない乗客の中で。

推測だが、麻薬かなんかの関係者が、安易に出られる身障者や付添いに扮しての、苦肉の策でないだろうか。

出入管理局員は、若い愛想のよい中国系アメリカ人だ。

リュックを背にした私を見て、”元気がいいね、”と笑いかける。車椅子20台も待っていたよ、なんて他愛ないお喋りの後、熱の測定も体の具合に関する質問も無しで、簡単に、“ウエルカム ホーム”と、通してくれた。

フレンドリーな係官の言葉に元気の出た私は誰にも頼らず外まで出られる。

外は懐かしいカリフォルニアのサンシャインに輝いていた。空気はカラッと乾き、丁度良い暖かさだ。

ターミナルの外で待つこと10分ほどで、次男のジムがサーッと車をカーブに寄せて止まる。

”コロナの為、ハグはしないよ、”と言い、運転席に座り,私たちを乗せて、ジムはトムの家に向かう。

家の修理が終わるまで、とりあえずトムの家に滞在させてもらう事にしたのだ。

同居人のシャーリーはあれから謝罪のメールをトムに送り、快く私たちを受け入れる約束をしたそうだ。

もっともそうなる前に、彼女は友達の娘である医者や、病院の救急医をしているトムの長男であるビルや、その他あちこち問い合わせしたそうだ。随分大ごとになったもんだ

最近越したばかりのシャーリーのコンドミニアムは地続きであるゴルフコースが、裏庭のように見える、当地でも一等地の高級マンションだ。