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チャボ吉の愛妻ぶりは全く涙ぐましい程です。
彼らの好物はミミズやアリのような小さな虫や、カナリヤのかごからこぼれるアワ粒やヒエの実ですが、そういうごちそうをチャボ吉が見つけると、必ずコーコココとチャボ子を呼んで先に食べさせるのです。
何処でこんなレデイファーストを身につけたのでしょうか。
庭に慣れるにしたがい彼らはどんどん行動範囲を広げて行きました。
垣根を飛び越えてとなりの庭に入り込んだり、毎日新しい冒険をしていきます。
そんな時もまずチャボ吉が危険の無い事を偵察してからチャボ子を呼びよせます。
チャボ吉は常に周囲の状況に気をくばり危険を察知するために全身に緊張感をみなぎらせていますが、チャボ子は夫を信じ頼りきって全てを夫にゆだねているのです。
弱肉強食の自然界で生きていくには、自分で自分の身を守るすべを身につけていかなければならないのに、チャボ子の姿はあまりにも無防備で、チャボ吉の過保護がますますチャボ子をだめにしていくようでした。
彼らにとって一番の敵はどこからともなく入り込んでくる野良猫でした。
チャボ吉のとぎすまされた神経は例え姿が見えなくても、庭の何処かに猫がまぎれこんできたのが解るらしく、突然ケーケケケと叫びたて、あまりにもけたたましいその声に驚いて、猫が逃げ出しても、とどまることなく、誰か人が出ていくまで叫び続けるのです。
野良猫どもの間でチャボたちのうわさが広がったのか、入れ代わり立ち代わり猫どもが大勢やってくるようになりました。 続く