Mrs Reikonoの短編小説 ジョージアの嵐

           ジョージアの嵐

 小肥りで、トーマスより数インチ背の低い彼女は、赤茶けた髪をポーニィティルに束ね、ジーンズを切ったショーツに白いTシャツをたくしこみ、その上に古びた赤いチェックのシャツをはおっていた。

タニアは新聞配達をして家計を支えているが、その収入を補うため家畜を飼っていると話しを始めた。

「今はチキンとアヒルを少し飼ってるの。今度は豚を育てたいと思ってるんだ」と彼女は言った。

「小さなピッグ ペン(豚囲い)はなんとか建てた.そして今は子豚を探している」と

続けた。

花をつけている有毒の黄水仙を器用に避け、若草を食む母豚の周囲をキイキイ鳴き

ながら走り回る子豚の群れを見ながら彼女は続けた。

「トミーは今何処に住んでるんだい?」トーマスは唐突に彼女の息子の消息を聞いた。「ええと、今幾つになった、十六か?」

「十七よ。父親と一緒にフィニックス シティに住んでるわ」

彼女はチャタフーチー河の対岸の町の名を挙げた。

「オリンピックの野球場の建設を手伝っているの」

「そうかァ オリンピックはみんなを金持ちにしているからなあ。俺を除いてのことだが」

ゴム長にこびり付いた赤土を彼女のトラックのバンパーでこそぎ落としながらトーマスは言い、ビーニィ(毛糸帽)を脱いで黒い縮れ毛の真ん中が禿げかかった頭をそれでこすった。

笑顔を続けていたタニアが何気なく、「子豚を少しくれない?」と聞いた時、彼は言ったのだ。

「金はあるのか?」と。

45歳で未婚のトーマスの出会いが又一つ終わった。

ため息をつき、スピードで走り去るトラックを見送った。