Mrs Reikoのルーマニア ブルガリア紀行

5月22日

朝早くホテルのダイニングルームで朝食。

少し早すぎたのか、コーヒーができてない。ホテルの使用人が食事している。皆ニコニコして、お早うと、声をかける。

相変わらず卵など見向きもせず、美味しいソーセージやハムをせっせっと食べる。

折角ヨーグルトが美味しいと言われる国に来ていても、あまり好きでないためバイパスする。

美味しそうなパン菓子もだ。

一尺ほどもある太いバナナは甘くて美味しい.アメリカ物の二倍も大きいキウイはちょっと酸っぱかった。

フランス人のツアー・グループがたくさん来ている。

これは私にとって初めて見る光景だ。

今までフランス人は、数多くの私のツアーの中にも居なかったし、彼らだけのグループにも会った験しがない。

自分たちの国だけが、観るに値すると思っていた誇り高き国民が、地に下りて来たか。

アレックスも、彼らのことは良く言わない。

英語で何か聞くと、“トン、トン、トン、トン、トン、”と突っけんどんにフランス語で言い返すと、抑揚を口真似して、皆を笑わせる。

赤い屋根の石造家屋や曲がりくねった道路の、アルバニア人が創ったという、古色蒼然たる中世期風の町でChurch of Nativity 降誕教会?を訪れる。

ブルガリアでもっとも多く装飾が施されている教会といわれ、1600年代に描かれたという2000枚以上の聖画が薄暗い教会の壁全体を覆う。

通常のキリスト降誕、受難、復活の絵と共に描かれた、“最後の審判”の絵が恐ろしい。

悪業を積んだ者たちが死の直後、槍を持った鬼共が待ち構えている地獄に落ちて行く絵は、悪行予防に効果満点だ。

クラーい気持ちで陽光サンサンの外に出、ホッとする。

プロディの町を見下ろす小高い丘の中腹に、ローマ古代円形劇場の廃墟が現存する。

素晴らしい眺めだ。

そこへ行く道で、一人の絵描きからその近辺を描いた黒のペン画を買う。

色つきの水彩画もあったが、なんとなくペン画に引かれた。

円形劇場近くの写真を撮ったりした後で、とあるレストランで昼食を摂る。

ジャネットがピザ、アレックスと韓国女性たちがスープ(ヨーグルトで作った冷たいスープだそうだ、)私は虹鱒を注文する。

パンも欲しいかと聞かれ、ウンと頷く。

やがてパイ皿のような丸いパンが最初に運ばれる。

縦の切り目が上皮に幾筋も入っている。みんな、首を傾げる。

ジャネットのピザかもしれないから、食べずに待っていたらと、アレックスが言うので、手をつけずに英語の解るウエイトレスを待つ。

やがてパンの二倍の大きさのピザが運ばれて来た。

恐れをなしたジャネットが、誰か食べない?と聞くが、誰もイエスと言わない。

次に巨大な虹鱒が運ばれてきた。ところが塩もなにもつけずの白焼きの魚は、新鮮だがイタダケない。

テーブルの上には塩コショウもおいてない。

少しずつ口に入れるが飲み込むのに苦労した。

片身の半分ほどで止めて、パンをむしって食べる。パンは美味しい。

勘定を払う時、みんな食べたものを挙げたが、“虹鱒一匹、”と言った私の皿を見てウエイトレスは、“一匹?”と笑い、持って帰れるよう、箱をあげようか、と聞く。

ジャネットにも聞いたが、二人とも断る。ピザは4分の1だけ食べられていた。

ホテルに帰り暑い中、昼寝していると、騒がしい音に目を覚まされる。

外に人がたくさん集まっているようで、一部の人が何か叫ぶと、それを追うように一同がドッと歓声を上げる。

さては共産党デモのシュプレヒコールと、思ったが、眠くて起き上がれない。騒音は繰り返し続く。

あまりの騒がしさに、ようやくハッキリ眼が覚め、起き上がって外を見ると、ホテル前の広場は人で一杯だ。

よく見ると、警官も立っているが、何もしないで見ているだけだ。さらに気をつけて見ると、群集は皆着飾った若者たちだ。

男は黒の背広にネクタイ、女は裾の長い舞踏服のようなものを着ている。

警笛を喧しく鳴らしながら、色とりどりの風船を風に靡かせ、窓から顔を出して叫ぶ男女を乗せた車が、人ごみの中を何台も通る。

訳の解らぬ外の騒ぎの続くなか、そろそろ晩飯の時間なので、ルームサービスを呼ぶと、電話が途中で切られてしまった。

仕方無しに階下に下りてレストランに入ろうとするが、ウエイターが握りこぶしの上に平手を乗せた合図で断る。

満員御礼だ。良く見ると戸外に居たような若者たちで満席だ。

外はまだ若者たちが行き乱れている。

チェックイン・カウンターで、何処か食事ができる所は無いかと、聞くと、そのホテルマンは簡単に、カフテリアに行けば良いと、言って先に立ち案内してくれる。

ナンダ、食堂の直ぐ隣がカフテリアなんだ。

閑散としているので、ロビーの一部かと思っていた。

愛嬌の良い可愛いウエイトレスに、ビール、スパゲッティ、カスタード、コーヒーを注文する。みな美味い。

値段は全部で11.24リヴァ=8ドルほど。安い! やはりあの庭園付きのランチは高かった。

騒ぎはハイスクールの卒業祝いだそうだ。

高校卒があれだけ騒いで、一流ホテルでディナーを食べるということは、ブルガリアは見た目より金回りが良いのであろう。

後でアレックスが、ハイスクール卒業であれほど大仰に騒ぐのなら、大学卒業生は何をするのかと、アンドレに聞いたが、案に相違して、大学卒業生は騒がない、彼らは就職や将来のことで頭が一杯だから、という答えが返ってきた。

ラテン系のブルガリア語はギリシャ語に似ていて、私には一語も解らない。

ロマン系のルーマニア語は、同系統の英語に似た単語が時折り見られる。

ギリシャ語を話すアレックスがメニューなど、翻訳してくれる。

話す言葉は解らぬが、字を見れば大体の見当がつくそうだ。

(中国を旅した時の事を思い出した。)

そういえば、夕べホテルでディナーの時、ウエイターが、“お済みですか?”と聞いたとき何気無くウンと頷いたが、ちゃんと解った。ブルガリアでも、やはりイエスは頷くのだ。

アンドレは言葉の全然違う国同士の駄洒落を吹いたのだ。

プロディProvdiv の町中のホテルに到着。

玄関は立派だが、部屋は安っぽい。テレビもろくに映らない。