Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                        

        アンディの故郷 ヴァージニア州 7

 

 エミイの二度目の夫アッシュが、彼女と離婚するから引き取りに来い、と言って来た。

彼女はその二年ほど前、水兵のアッシュとカリフォルニアで結婚していた。

除隊した彼の故郷のオハイオ州まで、夫婦は彼女を引き取りに行った。

理由を説明しようとしたアッシュをアンディは手で制し、黙って三人は家路についた。

人も全く見かけぬ田舎家に来たエミイは、一羽のヒヨコを家に入れて可愛がり、成長しても外に出そうとしなかったので、瑤子は家中に糞をする鶏のことで、また小言が絶えなかった。

基礎訓練を終えたフィリップが一時帰省した折、丁度彼が持っていたカリフォルニア行きのアムトラックの切符を彼女に与えると、彼女は喜んでカリフォルニアに行き、その後、オークランドで男と一緒に住んでいると言う手紙が来た

 近所にメリアン松田という六十代のハワイの二世が病気の従兄弟、ジョージを看病しながら、アポマトックス河畔の二階屋に住んでいた。

瑤子は人当たりの良い小柄なメリアンとすぐ親しくなった。

戦争中ハワイから本土に移住した彼女は、ニューヨークで働いた後引退して、両親が住んでいたその家に病気のジョージと移り住んだ、と言う。

山中温泉に住んでいたジョージは、アメリカに出て来て、バンドのバス弾きで相当の才能があったが、その頃の人種差別のため、ボストン交響楽団に入れなかった、とメリアンは言った。

アンディはメリアンの土地を分けてもらえないかと持ち掛けると彼女は喜んで、「所有地のどこでも好きな所を売る」と言ったので、きれいな小川が流れる場所を八エーカーほど分けてもらった。

その土地に今度は自分で家を建てる、とアンディが言い出した。

ポールに手伝わせて切り出した大木をトラックに積み、製材所で材木にしたり、床にセメントを流し入れるため、小さなセメントミックサーを買って、せっせと働いた。

ようやく小屋のような大きな二階建ての外側だけが出来上がり、屋根にトタンも葺いた頃、住んでいた家のパイプが凍って破れ、水が地下室に流れ出す、ということがあった。

家主は、直さずにそこを売る、と言ったので、早急に住むところが必要になり、急遽、業者に家の新築を頼む事になった。

業者は設計士の作った図面を手に二ヶ月ほどで家を仕上げた。

想像していた通りには建たなかったが、新しい家は気持ち良く、瑤子は新しい家に作った日本式の風呂のある生活を楽しんだ。風呂に入らないアンディも側で満足そうであった。