Mrs Reikoの長編小説    サンタ アナの風 編集

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 闘牛場の裏のサボテンやタンブルウイード(乾燥地や塩性地に生えるオカヒジキ属の植物秋になるとボール状に成長し、原野をころころと転がるので回転草と呼ぶ)があちこちに生えている傾斜面を転げるように走り出したはあはあと息を切らして、こんもりとした砂山の陰でしばらく立ち止まっては又走り出すジョージは何度も振り返っては後ろを見ながら真紀たちの前を走っていく。

もうこれ以上走れないと思う頃国境の鉄柵が十五メートル程先に見えた。

左の海岸の方に折れた鉄柵は何処までつながっているのか、その先は見えず真紀の胸に絶望的な不安が広がったが、鉄柵に沿ってなおも進むと間もなく波打ち際が直ぐ下に見える崖の上に三人は立っていた。

鉄柵は波打ち際から二十メートル程手前でぷっつりと切れている。

ほっとして思わず立ち止まった真紀達に「早く」とジョージが佳恵の手を引っぱり崖から滑り下りるのを助け真紀にも手を差し伸べた。

砂浜に下り立った三人は今来た方を振返って見たが崖の上やその向こうの闘牛場の方には人の気配は全く無い。

フラフラしながらも、力を振り絞って砂浜を走り鉄柵の切れた所からアメリカ国内に入った。

疲労と安堵感から真紀と佳恵は砂地に倒れこんだ。