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言葉も通じない外国のスキーリゾート地、小さな村の駅に、スキー板三人分を持って彼はシャトルバスから降ろされました。
足元はスキーブーツのままです。
夕闇がせまりネオンサインがちらほら灯り始めました。
見渡してもタクシーらしきものも見えず、寒さに肩をすくめて帰りを急ぐ人々も四方八方に散っていき、人影も少なくなってきました。
彼はそこから一人で宿泊先のホテルに戻らなければなりません。
朝、スキー場に出かける時はホテルまでシャトルバスが迎えに来て
くれたので、スキーの身支度をすっかり整え、ガイドやツァーの仲間と共にバスに乗り込んだのですから、この駅がホテルのどの方角にあるのか見当もつきません。
スキーはレンタルなので、紛失したら弁償しなければならないのは、解っていたけど、この重いスキー板を持って歩くことは出来ません。
暗闇の中に人目につかないような場所を見つけ、そこに二人分を押し込み、自分の分だけ肩にかつぎました。
旧市街地のこの街は複雑に入り組んでいて、見通しの良い直線の道路は全くありません。
曲がりくねった道を歩いても歩いてもホテルらしい建物は出てきません。
足は痛く、すでに豆が出来ているようです。
スキーウェアーの下は汗びっしょり、喉もからからで、唾さへ出なくなりました。
疲れ果てて野宿という言葉がふっと頭をかすめ、空を仰いだ時、滞在先のホテルのネオンが見えたのです。
見つけた!飛び立つ思いで、そちらの方に歩き始めました。
ところが、行けども行けども辿り着きません。 続く