2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

10 ホイッパー・ウエオ(彼女をよく叩け)、ホイッパー・ウエオ”と、パートナーを求めて囀る鶫の快い鳴き声の中、“バタン”という大きな音で、熟睡していたトーマスは目を覚ました。 ベッドの脇の時計は2時半を示している。 パパじゃない、トーマスは考えた。 …

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

9 西の太陽が木の間を縫って光を投げ、万物を茜色に染めていた。 恐ろしい嵐は、過ぎ去り、林の中は木の葉一枚ソヨともしなかった。 白い花が真っ盛りの野苺の叢の下を、茶色の野兎が餌小屋訪問のため、ゆっくり跳ねて行く。 猟犬が一斉に吠え始めた。ヘン…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

8 翌日市場に送る豚をトラックに積みこむ仕事も今日中にやらなければならない。 板で囲った通路の後ろから、男たちが大きなブリキ板を揺すってワラワラと音をたてると、豚共は悲鳴を上げ、先を争って荷台に立てかけられた板を駆け上り、トラックの上で喧し…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

7 道路に出て手を上げたトーマスは、すぐ北から来るハイウエイ・パトロールの車を認めた。 濡れて泥だらけの彼を見ると、パトロールの車は中央分離帯の芝生を横切り、Uターンしてトーマスの側で止まった。 パトロールが呼んだ二人の救援隊員をトーマスも手…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

6 雹は止み、雨も大分おさまっていたが、風は相変わらず強かった。 空のトラックが吹き飛ばされそうな強い風に向かい、両手でハンドルをしっかり握った 道路わきの樹木から吹きちぎられた枝葉が、ハイウエイのいたるところに散らばり、路上の白線が見えぬほ…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

5 風は巨大な樫の木を草の葉のようになびかせ、恐ろしい音をたてて窓を揺すった。 竜巻の警告をひっきり無しに映し出していたテレビのスクリーンは、二度ほど消えてまた点いた。 「テレビを消した方がいい」 画面をうつつに見ながら外の轟音に聞き入ってい…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

4 母がオリンピック チームの歓迎会員にボランティアすると言った時、ヘンリィは 「止めとけ!」と反対した。 彼は珍しく父親に同調して父子で反対した。 キクは、オリンピックの歓迎会員にボランテァするまで、特別に社交的と思われていなかった。 無愛想で…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

3 彼がようやくゲートを閉め、チエーンで二枚の扉を繋いだ時、ドライブウェイの向こうに白いトラックが目に入った。 「クソッ」と、口に出して、またゲートを開くのに苦労し始めた。 八の字に開かれたゲートをエーモスが押さえている中、父親のヘンリィ クレ…

Mrs Reikonoの短編小説 ジョージアの嵐

ジョージアの嵐 2 小肥りで、トーマスより数インチ背の低い彼女は、赤茶けた髪をポーニィティルに束ね、ジーンズを切ったショーツに白いTシャツをたくしこみ、その上に古びた赤いチェックのシャツをはおっていた。 タニアは新聞配達をして家計を支えている…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

ジョージアの嵐 1 トーマスは呆気にとられていた。彼には突然のタニアの変化が理解できなかった。 彼はただ、子豚をくれと彼女が言ったとき、金はあるのかと聞いただけだった。 タニアは無言で、止めてあった軽トラックに乗り込み、煉瓦色の湿った地面に深…