2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                              

道ならぬ恋 ジョージア州 19 頼子にはなんと言うの、と聞く彼女に、任せておけ、と彼は自信ありげだった。 実際、彼は、オハラの土地を自分も見たいから、と頼子に言ったのだ。 当日の朝、彼は瑤子と共に長距離バスに乗り込んだ コロンブスからネープルス、…

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道ならぬ恋 ジョージア州 18 瑤子の隣の小さな家に、八十代の老婆と五十代の看護婦の娘、それに、家政婦の、これまた五十代の女が住んでいたが、五十女たちは、たまにビールを瑤子におごってくれたりして、親しい付き合いがあった。 彼女等は、グリーソンと…

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道ならぬ恋 ジョージア州 17 グリーソンは、しばらく姿を見せず、電話もかけて来なかった。 寂しさに堪り兼ねた瑤子は、工場に行って彼の車の脇に車を止めて待っていると、相変わらずニコニコと小躍りして来る彼の姿が見え、彼女も思わず、ニッとした。 何事…

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道ならぬ恋 ジョージア州 16 それからまるで自然の成り行きのように、瑤子とグリーソンが結ばれるのに時間はかからなかった。 二人が結ばれた時の歓喜と恐ろしさを思い、瑤子は長い間、悩み抜いていた。 しかし次第に、彼女の世間に対するわけの解らぬ反抗、…

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狩猟 ジョージア州 15 アンディに朝鮮行きの命令が下った。家族を連れて行けぬ駐屯は十三ヶ月間となっていた。 瑤子はもう取り乱さなかった。彼女には相談相手になってくれるグリーソンがいた。 クソ食らえ、が口癖の彼は、何事もそれで済まして平気な顔であ…

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狩猟 ジョージア州 14 「ホラ、行くぞ」と舌を鳴らし、犬を連れて歩き出したグリーソンの後ろに、彼女は夢遊病者のように従った。 歩きながらグリーソンは、相変わらず冗談混じりに、スラグとバードショットの違いを説明したり、ウサギの頭を吹っ飛ばした“豪…

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狩猟 ジョージア州 13 広い野原の中では彼女の悩みなどほんの些事に思え、地平線まで続く原野の中で彼女の心は解き放され久しぶりに味わう開放感だった。 やがてグリーソンが車のトランクを開けて放した二匹の犬は、暫くピンと立てた尾を振り振り、雑木の繁…

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狩猟 ジョージア州 12 就職した牛乳会社で、始めはトラックの運転手として働いていたグリーソンは、やがて夜間の管理人になり、夜の十一時から朝の八時までの勤務になった。 一時間ごとに工場内を見回って異常の有無を調べる仕事は、ほとんど場内を歩き回る…

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狩猟 ジョージア州 11 家の修理を終えた彼は、庭に小さな畑を作り蕪の種を蒔いた。 蕪の葉は青々と茂り、その葉を摘むことが瑤子には小さな喜びであった。 蕪はアメリカ南部ではその根より葉のために栽培され、冬の野菜としてどこの家でも作られていた。 種…

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狩猟 ジョージア州 10 グリーソンがミシシッピーから出て来た理由を打ち明けた。 彼が仲間と狩猟していた時、誤って農家の豚を撃ち殺してしまった挙句、裁判沙汰になりそうになったので、その前に逃げて来た、というのが、彼の言葉であった。 気性の荒いミシ…

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障害児の娘 ジョージア州 9 アンディが発ってから一月ほどして、就職したけれど、家族を迎えに行く金を貯めるまで、暫く置いてくれないか、とグリーソンから電話で頼まれた。 それまでいた友人の家に居辛くなったのであろう、と瑤子は快く承諾して、また彼の…

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障害児の娘 ジョージア州 8 相談する人もいない煩雑な毎日に疲れた瑤子は、だんだん世間に対して反抗的になっていった。 エミイがトラブルを起こす度、日本人だから礼儀知らずだ、とか、無知だとか、親が批判されるのが、瑤子には堪らなかった。 人の良いア…

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障害児の娘 ジョージア州 7 知能が遅れている子供たちを集めたその教室では、子供たちがそれぞれ勝手に教室内を歩き回ったり、ティシュで花を作ったり、レコードを鳴らしたりして、纏まりがなく、これではただのベビーシッターだ、と瑤子は不満であった。 瑤…

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障害児の娘 ジョージア州 6 その間にも彼は看護兵として、度々二週間、一ヶ月と、演習に行く歩兵隊について 行かなければならなかった。 それでも、ようやく一応人並みになった家に飽き足らず、ある日彼は、道で見かけた作業中の土木業者と契約して、台所と…

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障害児の娘 ジョージア州 5 日本を出た時、あのように利発なエミイの障害の原因を、瑤子はいろいろ考えてみたが、ヴァージニアに来たばかりの時起こした、高熱のためのひきつけしか考えつかなかった。 エミイは少し離れたダウンタウンの、特別教室がある学校…

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障害児の娘 ジョージア州 4 二年生になったエミイの成績は芳しくなく、読み書きは一応できるが、算数が一切ダメだった。 焦った瑤子は彼女が学校から帰ると、テーブルにボタンを置いて“一足す一”から教えようとした。 算数の原理を理解することができない彼…

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障害児の娘 ジョージア州 3 グリーソン家に三日泊まった後、オハラ一家は彼に教えられた家を借りることにした。 今でいう二LDKで、家の前後に少しばかりの庭があり、アンディは早速手押しの芝刈り機を買って来た。 エミイは二年生、ロバートは幼稚園児に…

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障害児の娘 ジョージア州 2 彼らは真っ先に知人のグリーソン曹長の家を訪ねた。 グリーソンも妻の頼子も日本からの顔見知りであった。 彼らとオハラ夫婦は趣味も違い、その頃は本当に顔見知り程度であったが、コロラドに住んでいた友人夫婦に、彼らの住所を…

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障害児の娘 ジョージア州 1 一年間の講習を終えたアンディに、ジョージア州のフォートべ二ングに勤務するよう命令が出た。 とうに売り払ったウィリスの代わりに買った二台の中古車、ジープ、ステーションワゴンと、シヴォレーの二ドアを持って移ることにな…

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再びコロラド州 3 ポールを連れて退院してから、相変わらず子供たちの世話に明け暮れしていた瑤子は、ある日新聞で、“ハイスクール卒業免状獲得”という広告を見て、早速電話した。 中年の男が訪ねて来てコースは全部で140ドルだ、と言った。月賦の嫌いな瑤子…

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再びコロラド州 2 五月ニ日の早朝、普段のように身支度したアンディは、産気付いた瑤子と三人の子供たちを車に乗せて病院と託児所に向かった。 産室に一人入れられた瑤子に、「今、痛みは何分おきか、」と医者がちょいちょい部屋に来て尋ねた。 目前の壁に大…

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再びコロラド州 1 アンディは、フォートカールソンには戻らず、デンヴァーのフィツモンズという大きな陸軍病院に、本格的な看護兵の資格を取るため、配属になった。 一年講習を受ければ特別手当も出るという、相当難しい勉強に取り組むことになったのだ。 そ…

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ウイスコンシン州 2 そういうことを予期して頑丈に建てたのであろう、家や風車に被害はなかったが、瑤子は強風の恐ろしさをいつまでも忘れられなかった。 瑤子は四人目の子供を身ごもった。相変わらずつわりに悩み続ける瑤子は、イライラしてアンディや子供…

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ウイスコンシン州 1 ウイスコンシンでは小高い丘上の古い二階家を借りた。 持ち主が以前牛を放牧しながら住んでいたというその家は、カラカラ鳴る十メートルも上空の風車で水を汲み上げセメントの巨大なタンクに溜め込む、という、西部劇に出てくるような家…

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コロラド州 3 アンディはドイツでの上司の薦めもあって、コロラドへ着いた後、看護兵に職種を変えていた。 階級はそのままでも看護兵として一から始めた彼に、ウイスコンシン州のキャンプマコイという所で演習する予備兵たちの衛生兵として、三ヶ月間行くよ…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁

コロラド州 2 満五歳になったエミイは、その九月から幼稚園に通うことになった。 毎日スクールバスで送迎されていた彼女が、ある日、校長だという男の車に乗せられて帰ってきた。 校長の後ろで、背もたれに手をかけて立っていたエミイを降ろすと、プーンと…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁                                                                                                                                       編集   ドイツ 4

コロラド州 1 コロラドに着き, また住宅難が始まった 高級住宅が並ぶデンヴァー郊外の陸軍基地、フォートカールソンの家族住宅は満員で、暫く待たねばならぬ、と言われ、一家はパイクスピークスの高峰を眼前にする山中のキャビンに、ひとまず落ち着いた。 険…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁                                               

ドイツ 4 四日して瑤子は赤子のフィリップを連れて退院した。 アパートに帰った翌日、瑤子が椅子に座って赤子に乳を与えていると、クリスティ が入ってきて「おめでとうございます」とニコニコして彼女にキスをした。 それを受けた瑤子は、「ありがとう」と…

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ドイツ 3 瑤子はまた妊娠した。 相変わらずの眩暈と吐き気で床から起き上がれぬ日が続いた。 アンディは仕事から帰ってくると、辛抱強く家事をし、子供たちの世話をした。 ドイツ人のメイドを雇おうとすればできぬことではなかったが、母への送金と車の月賦…

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ドイツ 2 楽しまぬ十日間の船旅もいよいよ終わりに近付き、船はどんより曇ったブレマハーヴエンに入港した。 だが、いよいよ夫に会えると、総勢デッキに出ていたワイフたちに衝撃的なニュースが伝わった。 船内で子供が一人病気になっていたが、小児麻痺を疑…