2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

28 両親の家に立ち寄ると、いつになく早く帰宅したキクが、アメリカのチームが優勝し、日本のチームは銅メダルも取れなかったと、疲れた表情で報告した。 日本チームは、閉会式にも出ないで帰国するそうだと、続けて言ったキクは、 「そうそう」と、思い出し…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

27 その日はアメリカのチームが勝ち、町中歓喜に沸き上がった。 暑さでゲンナリしたキクが夕方遅く帰宅した。 気温は華氏の96度まで上がり、不快指数は110度であった。 暑さばかりでなく日本チームの負けた事がキクの心を沈ませているようであった。 あ…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

26 「選手たちは君と仲が良いのかい?」 キクは通常愚痴を言う女ではなかったが、それでも時々選手たちの傲慢さをこぼしていた。 「彼女たちは自分をなんだと思っているのかしら、彼女たちの礼儀の無さときたら」 疲れた顔で誰にともなく話していた。 「表面…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

25 「今日は日本のチームが勝つと良いね」 トラクターの轟音の中、彼が叫んだ。 「そうね。彼女らは今日強いチームと勝負するのよ、アメリカンと。」 「ああ、それなら負ける方がいい」 「勿論そうでしょうよ」彼女が笑った。 「でも、私はどっちでもいいの…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

24 二日後の朝早く、泥だらけの長靴を履いた由美子がピクニックのバスケットを下げて現れた。 豚の餌袋をトラクターに積んでいたエーモスは、膝上までくる長靴を履いた彼女が、大きな足で歩く操り人形のように見え、笑い出した。 彼女も笑って、「スニーカー…

Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

23 ホワイト。タワーは農夫やセールスマンで混んでいた。 「あら、トーマス、お友達は誰?」 顔見知りのウエイトレスが、由美子を頭のてっぺんから足の先まで見ながら聞いた。 「ママの友達だ」 そして、由美子になにが欲しいかも聞かず、いつものハンバーガ…