Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

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時はすでに7月始め、容赦なく照りつける太陽の下、アメリカ南部のジョージア州は焦げ付きそうに暑かった。

 用意万端のオリンピック宿舎は、次々と選手で満たされた。

アトランタでの開会式は、7月19日に予定され、ソフトボールの第1回戦は7月21日に行われることになった。

コロンブス市内の建物や街路樹は、関連国の旗やオリンピックのロゴが書かれた幟で飾られ、町は華やかな行事への期待で沸き立っていた。

騒ぎの圏外にいるトーマスは、平常通り農場の仕事を続けていた。

由美子のイメージは暫く彼から遠ざかっていた。

オリンピックが始まる前、数週間日本に帰った彼女は、開会式までには帰ると、聞いていた。

 キクは一度面白そうに、由美子がもっとトーマスのことを知りたがっているようだと、彼に話した。 

そして知的な彼女の前では行儀良くしろと、注意した。

 男たちは豚の世話の他、乾し草を刈り、フェンスを繕い、玉蜀黍畑の草取りもしなければならなかった。

オリンピックも由美子もトーマスの意識から遠ざかっていった。

毎晩、トーマスは、這うようにベッドに入ると、頭が枕につくかつかぬかうちに深い眠りに落ちた。