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二日後の朝早く、泥だらけの長靴を履いた由美子がピクニックのバスケットを下げて現れた。
豚の餌袋をトラクターに積んでいたエーモスは、膝上までくる長靴を履いた彼女が、大きな足で歩く操り人形のように見え、笑い出した。
彼女も笑って、「スニーカーも持ってきているのよ」と、靴紐で両方を繋いだスニーカーを見せた。
「キクがこれを履いて行くように、言ったの」 由美子は長靴を指して言った、
「彼女は私が泥に埋まっちゃうだろうと、言った。本当にそう思う?」
「そうかもな」エーモスは体内に奇妙な温もりを感じた。
彼女を泥にはまり込ませぬようにしようと思った。
由美子にトラクターに上るよう、合図した。
「しっかりつかまってるんだよ、泥道でトラクターに乗るのは危ないから」 彼が注意すると、由美子は素直に頷いた。
真昼の酷暑を予告する透明な朝の空気は、未だひんやりと気持ち良かった
トーマスはまた由美子の香りに気がついた。
それは野原一面のクローバーのようであった。
その日が一日中良い日になるように彼は感じた。