7
チャボ子は雨をさけることもせず、ただぼうぜんと雨の中にたたずんでいます。
生活のすべてを夫にゆだねていたチャボ子には全く生活能力がないのです。
食べることすらも夫が居なければどうして良いのかわかりません。
はたしてこれからひとりで生きていけるのでしょうか。
チャボ子がチャボ吉の居なくなったショックから立ち直り、何とか生きていけるだけの生活能力を身につけるまで、それから一週間かかりました。
チャボ吉の居た頃の元気さはまだありませんが、今では土をほり、虫を探し出し、樹の根元の乾いた土を探し出し砂浴びをして、おそってくる猫どもをケーケケケといかくして一人前のチャボに成長しました。
それから又一週間が過ぎた頃チャボ子の様子がいつもと違うのです。
何が違うかと言われてもはっきりは言えませんが、何だかきぜんとしているのです。
今までの頼りなげな弱々しい様子がなくなり、行動に自信があふれているのです。
不思議に思い、ねぐらをのぞいてみると、小さくて真っ白な卵が産まれていました。
チャボ吉は自分の死を予期していたのでしょうか、チャボ子の体内にまるで形見のように自分の子供を残していったのです。
チャボ子は五日間卵を生み続けると、パタッと出てこなくなりました。
ごくたまに、天気の良い暖かい日の昼下がり、外に出てきて水をのみ、餌を食べ、砂浴びをして、一分の時間も惜しむかのように走って帰っていきます。
あんなにも美しかったチャボ子なのに、すっかりやつれて日に日にやせていきます。
新しい生命を生み出すために体力の限界ぎりぎりのエネルギーを使っているようです。