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小さくて、いかにもたよりなげに見えるのに、何かと言うと、直ぐ人間の手を借りる

チャボたちがしゃくにさわってたまらないらしく、猫もしつこくチャボたちを追いかけます。

追いかけられるたびに、チャボたちはバタバタと羽音を立てて屋根の上や高い桐の梢に飛び上がり猫をやり過ごしていました。

何度も羽を使ってるうちにチャボにしては飛行時間も長く、どんな高い所にも飛び上がれるようになりました。

初めて見る人は一瞬白いカラスが飛んでいるのかと思うほどでした。

いっときも離れたことのないチャボ吉とチャボ子ですが、突然猫におそわれた時は、

さすがにチャボ子も必死に逃げるので、チャボ吉は隣家の屋根の上、チャボ子は庭の桐の樹のてっぺんへ、と離れ離れになってしまう時があります。

そんな時はチャボ吉の方がどんなに遠くへ逃げていっても、まず先に庭に戻り、危険のさったのを確かめてから、コ、ココココとチャボ子を呼びよせるのですが、チャボ子はチャボ吉が迎えに行くまで、頑固にそこを動きません。

あまりのわがままぶりに、さすがのチャボ吉も「えーい、勝手にしろ」と言って一度迎えに行くのをやめたことがありました」

なんとチャボ子はそれから延々一時間もあわれな声で「コーコ、コーコ」と鳴き続け、ついに根負けしたチャボ吉が迎えに行き、やっと連れ帰るということがありました。

チャボ吉の献身的な愛情はチャボ子をますますわがままで、気位の高いチャボにしていくようでしたが、羽の色はいっそうつややかに純白に輝き,はっとするほど美しいチャボになっていました。

しつこい野良猫どもも、あの耳をつんざくようなケーケケケという鳴き声に恐れをなしたのか、パタッと訪問がとだえ

チャボたちにとってのどかな、平和な日が続きました。

でも、その平和な日は長くは続きませんでした。

悲劇はある日突然やってきました。

それは、皮肉なことに、天敵と思っていた野良猫ではなく、お互い気心のしれた仲だと思っていた隣家の飼い犬、ムクだったのです。

ムクはつながれている時はおとなしく、チャボたちが、側に寄ってお皿からこぼれたご飯つぶをついばんでも吠えもせず、知らん顔をして寝そべっているので、チャボたちはすっかり警戒心をなくしていたのです

その日もいつものように安心しきってムクの小屋の側に行って遊んでいました。

ところが、ムクは突然何を思ったのかチャボたちに向かって飛びついたのです。 続く