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驚いたチャボはけたたましい鳴き声をあげてチャボ子は柿の木のてっぺんに、チャボ吉は隣家の屋根の上に飛び上がりました。
チャボ吉もチャボ子もムクの手の届かない所に逃げてしまうと、大きくなってケーケケケと盛んに威嚇していました。
あまりのけたたましさに、ムクがあきれて小屋に入ってしまうと、いつものように、あっちの屋根とこっちの樹の上でコーコココ、コーコココと呼び合っていました。
でも、チャボ子がチャボ吉の声を聞いたのはそれが最後となってしまいました。
チャボ吉の姿が忽然と消えたのです。
敵はまさかと思っていた大空からやってきたのです。
誰も見た者は居ないので、はっきりしたことはわかりませんが、チャボ吉はカラスか、タカが声も出せぬほどの一撃を加えた後、両足でしっかりとつかまえ、大空のかなたに連れ去られたらしいのです。
その後の足どりは依然として、つかめていません。
最愛の夫を失ったチャボ子の憔悴ぶりは、はためにも可哀想でした。
チャボ吉の居なくなったその日は、自分の身の上に何が起きたのか、わからぬままに、ただ、コーコココとせわしなげに夫を探し求めていました。
日暮れになって、もう眼が見えなくなるというのに、いっこうにねぐらに入ろうともしません。
庭石のところに来てしょんぼりとたたずんでいます。
その姿はたった半日でこうも変わるのかと思うほどやつれて羽はつやがなくなり、すっかり色あせて全身から哀しみの色があふれ、打ちひしがれている様子は哀れでした。
翌日は雨ふりでした。 続く