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とにかく心底から嫌いなトムとは絶対眼も合わせぬよう努めた。
時々食堂ですれ違う事があってもうっかり眼を合わせて「ハイ!」などと言われるのは考えても嫌だ。
メアリィのテーブルに行ってからニ三週間経ったある日、ナンシーがウオーカーを押して、図書室でNational Geographicを読んでいた私の側に来た。
「トムが私にものを言わなくなった」
と、悲しそうに伝えた。
「どうしてかしらね」
「I don’t know」ナンシィは元気がない。
その後、毎回食事に行くメアリーが観察した所、以来ナンシィは隣りのテーブルに移りシャーリィが顔を出さなくなった私達の元のテーブルには彼一人が座り、二人は話しどころか顔も合わせなくなったと言う事だ。
「気を付けなさい」彼女が言う。
「あなたは彼のタイプだから」
「嫌な事言わないで下さい」私は一笑にふした。
ある日メアリーが言った。
「昨日貴女の部屋に行ってノックしたけど、答えがなかった。
「たぶんヘッドセットを付けてテレビを聴いていてノックに気がつかなかったんでしょう」
すると彼女は聞き捨てならぬことを言った。
「中で物音がした、ソレがね、、、」彼女が口ごもる、そして言った。「セックスしているような声。。。」
「トムが嫌いと言いながらよろしくやってるのかと思った。。。」
とんでもない事を言う人だ。
相手になるのも馬鹿らしく無視して部屋に帰った。
彼女は本当にボケていたのだ。彼女の作り話で妄想がふくらみ、こんな事まで言い出したのだ。
そういえば彼女の話しはお金とセックスの話しばかりだった。
無性に腹が立った。
食堂に出るのを止めた。 続く