⒔
トーマスは2日間留置場に入っていた。
彼の足首はまだズキズキ痛み、その上、留置場で眠れなかった彼は酷く疲れていた。
牢仲間の4人は黒人で、事件について話すような相手ではなかった。
「トーマス来い」
ゆっくり足を引きずってハウエルの側に寄った彼に、ドアを開けた副官が、出て来いと、手招いた。
トーマスは釈放され、「父親が待っている」と、オフィスに向かいながらハウエルが告げた。
「 そうか。ギャルビイが農場に泥棒に入った、ということが解ったんだナ」
副官はなにも言わず、ヘンリイがシエリフたちと談笑しているオフィスに彼を導いた。
バートンが大声でトーマスに言った。
「ギャルビイの奴を捕まえた。君の農場で兄は射たれたと、彼の弟が証言した」
あまりの腹立たしさに言葉も出ぬトーマスは、黙って彼らが保管していた財布の受け取りにサインした。
「Come on!」
またいつもの渋面に戻ったヘンリイが促した。
車がハイウエイに出るまで、彼は口を開かなかった。
「医者に足を看てもらうか?」
「ノー捻挫しただけで、折れていないようだ。」
トーマスは足首を撫でながら聞いた。
「ギャルビイの傷はどう?」
「ああ、片一方のチーク(頬)にかすり傷を受けただけだ」
「頬?足だと思った」。”
「もっと上だ」ヘンリイが口元をゆがめてかすかに笑った。
「ああ、彼の尻か。」
トーマスも初めて笑った。
逮捕の朝トーマスが留置場から電話した時、相変わらず不機嫌なヘンリイは、トーマスが足首の怪我を伝える前に、電話をブッキラボーに切ってしまった。