Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

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スーパーの倉庫でデーヴィドとサイモンが、時々葡萄を口に放り込みながら、包みから取り出した野菜を、ドラム缶に投げ入れていた。

スーパーが期限切れで払い下げる野菜は、時々まだ食べられる良い物がある。

トーマスはよく、卵、メロン、芋などをケースで持ち帰った。

キクは殆ど食物を買う必要が無かったが、そのことを友達に知られるのを恥じた。

 

「どこにいたんだ?誰かとダべってたのか?」

 デーヴィドが知りたがった。彼らは野菜を回収した後、牛乳会社で期限切れの乳製品を貰い受けて来なければならなかった。彼らが家に帰るのはいつも真夜中過ぎていた。

「ちょっと引き留められた、、、えーっと、、、レデイに」 トーマスが笑った。

 「誰に?」デーヴィドが彼を見た。サイモンも好奇心の眼を向けた。

 「えーと、、、ユミ、、、とか、ユミコとか、」  葡萄の包みを取り上げながらトーマスが投げやりに言った。

 「ああ、オリンピックの!」 デーヴィドは数個の葡萄を口に放り込んだ。

 「うん、ママが彼女をデイナーに呼んだんだ」 トーマスは口いっぱいに種無し葡萄を頬張りながら答えた。

 「彼女は鹿の肉を食べてた。」 トーマスが思い出して言い足した。

「ああ、例の!」「うん、例の」

 デーヴィドは一週間ほど前、車の前に突然現れた小鹿を轢いてしまった。

若い鹿は外見相当傷んでいたが、肉は汚れていなかった。

彼はそれを農場に持ち帰り皮を剥いで切り分け、フリーザー用の紙に包んだ。

トーマスはそれを、友達が呉れたと、キクに渡した。

キクは肉の出所をいつも気にするので、もし事実を話せば料理せぬことを、トーマスは知っていた。

「彼女はとても美味しいと、言っていた。」 野菜を缶に投げ入れながら、トーマスが答えた。