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トーマスはホースをホールダーに架け、広場に向かって坂道を上り始めた。
「ランチは食べたの? もしまだなら、なにかスーパーや牛乳屋から貰ってきたものがあるよ。 知ってるだろ、ガーべジ(ごみ)、」彼は笑って聞いた。
「ノー、あなた、私と一緒にホワイト・タワーに食べに行かない?そこはあなたの好きな場所だと、キクが言ってた。 私のおごりよ」
「行けるけど、俺の着てるもの、、、」トーマスは泥だらけの服を見下ろした。
「あなたが構わなければ、私は構わない」
トーマスはホワイト。タワーに日本人の女と一緒に居る自分を想像した。
そこで働いているウエイトレスや、食事をしている近所の男たちは、彼らを凝視することであろう。
彼らが俺のランチ代を払うわけじゃなし。
「レッツ ゴー!」彼は振り返って由美子を促し、歩き始めた。
「私、帰ってくるのが待ち遠しかった。キクと会うことが、そして、あなたとも、、、」 由美子はチラと彼を見た。
「どうして俺と?」 驚いたトーマスが聞いた。
「どうしてか、知らない。 多分あなたの率直さが好きなのよ」
彼女が笑った。
「あなたはまるでMountain man(山男)、古いアメリカの開拓時代の小説に出て来る男みたいだから」
「Uncouth(粗野)な?」
「ノー、Rough and ready(行動的な野人)」 彼女が微笑んだ。
「どこが違うんだ?」トーマスも笑顔で答えた