Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁              

                                  青春  13

出立の朝、伯母や近所のおばさんたちが集まって見送ってくれた。

母はヨチヨチ歩きのエミィのために涙をこぼした。

利発なエミィは誕生日前から、「オバアチャンはどこ?」と聞くと、母の方を指差すようになっていた。

東京に着き、アンディがとってあった和風旅館で瑤子がホッとくつろいでいると、トランクを持って出て行ったアンディが疲れた様子で帰って来た。

トランクが重すぎて軍の郵便局から送り出せなかった、と言い、開けて中の物を上から放り出し始めた。

基地ののハウスに住んでいたら、軍のトラックが来て荷作りし、本国まで送り出してくれる筈のところ、実家にいた彼女は、荷物を全部チッキで持って来なければならなかったのだ。

ドンドン物を放り出す苛立ち顔のアンディに話しかける勇気もなく、瑤子はエミイを抱いて黙って見ていた。

文句を言っても仕様がないことは解っていたし、何を捨て、何を持って行くかなど、考えるだけでも煩わしかった。

宿の女中が驚いて、訪問着などもあることだし、家に送ってあげましょう、と言ってくれたので、母の住所を書いて渡したが、その後母が何も言わなかったことで、それが実現しなかったことを瑤子は後で知った。