Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                       

                    狩猟    ジョージア州 15

アンディに朝鮮行きの命令が下った。家族を連れて行けぬ駐屯は十三ヶ月間となっていた。

瑤子はもう取り乱さなかった。彼女には相談相手になってくれるグリーソンがいた。

クソ食らえ、が口癖の彼は、何事もそれで済まして平気な顔であった。

自然と瑤子にもその不敵な精神がのり移り、ポリスも学校も隣人たちの思惑も、前のように気にならなくなっていた。

前々から瑤子に対する熱い思いを誰はばかり無く示していたグリーソンに、複雑な思いで接していた瑤子は、日ごとに激しくなる彼の求愛を正直、嬉しさと共に扱いかねていた。

「今までにも好きだと思った女はみな手に入れたんだがナ」と、人妻に平気で言い寄りながら、全く無邪気に彼女の逡巡を訝る、

目鼻の大きな黒い縮れ毛の彼の顔を、瑤子はつくづく見ながら、「もし、悪魔が本当にいたら、あんたみたいな顔かもしれない」と、角を生やして大きなフォークを脇に持った彼を想像して笑った。

しかし、彼の言葉も態度も何もかもが好もしく、一日でも彼が顔を見せぬ日は無性に寂しかった。

瑤子の気持ちを知ってか知らずか、アンディはいつものように熱烈なキスと抱擁を繰り返した後、朝鮮に発って行った。