道ならぬ恋 ジョージア州 18
瑤子の隣の小さな家に、八十代の老婆と五十代の看護婦の娘、それに、家政婦の、これまた五十代の女が住んでいたが、五十女たちは、たまにビールを瑤子におごってくれたりして、親しい付き合いがあった。
彼女等は、グリーソンと庭の椅子に坐って、会話を楽しむようにもなっていた。
ある日、例のように彼女等が座って話しをしている最中に来た彼は、彼女達が前の晩、バーに行ったことを知り、そのことで瑤子にまた、しつこく問い詰め始めた。
家政婦のヘレンが冗談に、「あんたの知ったことじゃない」と二度ほど繰り返すと、彼は、「黙れ! 彼女に聞いているんだ!」と恐い顔をしてヘレンをにらみ付けた。
「そんな言い方をしなくても。ただ三人で近くのバーにビールを飲みに行ってバー
テンダーやそこに居た男たちと話しをして帰ってきただけの事なのよ」と彼をたしなめた。
「バーは大して面白くないから、もう行かない」と言うと、
すぐ機嫌を直した彼は、明日またウサギ狩りに行こう、と元気に帰って行った。
どうして彼のなにもかもがそんなに好ましいのか解りかねたが、その子供のように嬉しそうな顔を見て、瑤子は優しく充たされたような気分になった。
彼は仕事にも恋にもマメな男であった。
昼間寝ている彼の代わりに、瑤子はよく頼子を車に乗せて買い物に連れて行ったが、彼女が迎えに行くと、寝ていた彼は必ずシーツを裸の体に巻きつけて起きて来た。
瑤子がいる間中、そこでお喋りして、彼女等が出かけた後、またベッドに入る、ということを毎回繰り返した。
朝鮮のアンディからは相変わらず毎日のように手紙が来ていたが、ある日、彼は手紙で、フロリダの土地を見てきてくれないか、と瑤子に頼んだ。
土地は、新聞か雑誌の広告で見たものを、現場を見に行きもしないで彼が買ったものであった。
土地の在り処や不動産屋の住所も送って寄越したので、瑤子は行くことにした。
瑤子は隣のヘレンと話をつけて、子供達を二.三日みてもらう手はずをつけ、バスで行くことに決めた。
ところがそれを聞いたグリーソンは、自分も行く、と言い出したのだ。