Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                       

                     道ならぬ恋     ジョージア州 16

それからまるで自然の成り行きのように、瑤子とグリーソンが結ばれるのに時間はかからなかった。

二人が結ばれた時の歓喜と恐ろしさを思い、瑤子は長い間、悩み抜いていた。

しかし次第に、彼女の世間に対するわけの解らぬ反抗、それに、“The Long Black Veil”のような切なくも甘い、“隠れた恋”を好んでテーマにするカントリーミユージックに誘発されたように、瑤子は何をおいてもグリーソンの胸に飛び込みたい、

という激情を抑えかねていた。

どうせ娘は将来、娼婦、という絶望もそれに拍車をかけた。

浮気者”と言われる彼のこと、どうせ、一時の火遊びであろうことが、かえって瑤子の気持ちを楽にした。

一年もたって彼が飽き、激情が冷め始めた頃には、瑤子もアンディのもとに何事も無かった様に戻れるかもしれない、と彼女は、一人よがりなことを思い巡らした。

瑤子はアンディをも愛していたのだ。

子供達が学校に行っている午前中に、彼と逢瀬を繰り返した。

会う毎に罪の意識は薄れてきたが,頼子に対してだけは面目なく、いつも済まなく思っていた。

瑤子は運転しない彼女をどこへでも連れて行った。

五人の子供達の良い母親で従順な妻は、一番下のゲイルをとても可愛がり、夫が瑤子と出歩くのを気にも留めぬ風であった。

だんだん二人の中が親密になって行くと、短気なグリーソンは、瑤子を嫉妬して、腹を立てることがあった。

身に覚えのない事に嫉妬されて、瑤子も冷たい態度で接し、一切連絡は取らなかった。

グリーソンなどいなくとも一人で狩りに行ける、と腹立ちまぎれに犬を車に入れて、翌日フォートべ二ングに行った瑤子は、夕暮れになっても犬を捕まえることができず往生した。

やっと犬共を鎖につないだ時、あたりは既に暗くなっていた。

銃を肩に二匹の犬を連れた彼女は、車の方角と思える方に向かって歩き出したが、いくら歩いても車は見つからなかった。

なおも歩き続けていると、閑散な道にたった一台走ってきた車がバックして彼女の側に止まった。

どこへ行く、と聞いた車中の男に、自分の車を探しているが見つからない、と瑤子は告げた。

暗い田舎道で疲れきっていた彼女は、男がどんな人物か、など疑う気力もなかった。

幸い親切な男は、犬を車のトランクに入れ、反対の方角に停めてあった彼女の車まで送ってくれた。