Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                          

            アンディの故郷 ヴァージニア州 3

アンディは、毎日車で表通りの新聞受けまで新聞を取りに行き、ついでに、カウボーイが首に巻くような、赤や紺のバンダナが並ぶガラスケースや、だるまストーヴが置かれた、1920年代の映画のセットのような店で、近所の男達と雑談を楽しんだ。

彼らの中には昔彼と一緒に小学校に通った者もいて、話が弾んだ。

家主は、時々アンディや子供達に家賃の代わりの仕事を頼んだ。

子供達にはりんごの枝切りを、アンディには二階屋の屋根のペンキ塗りを頼んだ。

落下傘部隊にいたこともあった彼が、高い所は怖い、と言ってロープをぐるぐる体に巻きつけて屋根に登ったのには家族で笑った。

その二階屋には、家主の家の古いガラクタが数多く入っていて、アンティクのような農具や家具を見ることが瑤子の楽しみの一つであった。

また、真冬にアンディについてトラクターに乗り、牛たちに餌を与えにも行った。

ラクターを見ると、牧場のあちこちから大きな牛たちが走って来て、二人がワイヤーを切って落とす干草を旨そうに音を立てて食べるのは見ものであった。

酪農場に住んでいたアンディの妹、ジョージアナと夫のドンは、度々バービキューに瑤子たちを呼んでくれた。

ベンチに座って、バービキューソースをかけて焼いたステーキや、ポテトサラダ、畑から採れたばかりのトマトを食べながら、たまに現れる野生の七面鳥や鹿の群れを眺めるのは、堪らなく愉快なことであった。

テッド夫婦と一緒に住んでいた父親も時々来て、久しぶりに集まった五人の子供たちに囲まれ幸せそうであった。

脳卒中を起こした母親は養護ホームに入っていたので、瑤子たちは一週に一度ほどリッチモンドにあるホームを訪ねた。

言葉を失った彼女はニコニコ笑うだけでアンディの事も解らないようであった。

ホームの白人や黒人の老女たちは、東洋人を見たことがなかったようで、いつも瑤子をしげしげと眺めていた。