Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                          

       アンディの故郷 ヴァージニア州 2

 ヴァージニアでは、あらかじめ打ち合わせておいたアンディの弟、テッドが、出迎えてくれた。

早く落ち着いて子供たちの学校を決めなければならなかった瑤子は、毎日借家探しをした。

二週間後、煙草栽培人の持ち家で、緩い起伏の野原の真ん中にあり、舗装された道路から泥道を百メートルも入って行った所にある小さな家が見つかった。

周囲に人家は皆無で、家の裏に大きなりんごの木が十本ほど伸び放題の枝を広げ、家のすぐ側には物置として使われていた大きな二階屋があり、近くには鉄柵に囲まれた、家主の先祖代々の墓があった。

瀟洒な家に住む家主は、道端に小さな雑貨屋も営み、年の頃七十歳位のきりっとした品のある老人で、

「自分は正直な男だが、君も正直であってほしい」とアンディに電気水道をふくめて安価な家賃で貸してくれた。

手伝いの農夫に貸していた簡素な二LKは、リビングルームに大きなオイルストーヴがあるだけで、本当に必要な空間しかなく、掃除の手間がはぶけるので瑤子は喜んだ。

ハッフィを前庭に繋いで、瑤子は気も晴れ晴れと家を掃除した。

それから一週間ほどして起きた雷雨の轟音に、穏やかなカリフォルニアの気候の中で生まれ育ったハッフィは驚いて吠え狂い、鎖を切って家の戸をひっ掻き、中に入りたがった。

実際、ヴァージニアの、天地も裂けるかと思われる雷は、何度経験しても、瑤子も

慣れるということはなかった。

子供達は舗装道路まで歩いて行き、そこからスクールバスで通学することになった。

高三年のフィリップはすぐ先生に気に入られ、元気に通学したが、その年から高校に通うことになったポールは、カリフォルニアの友達を慕って、自分で金を払うから電話をかけさせてくれ、と電話をかけたりしていた。

しかし、それまで会ったこともなかった親類達との交際が始まると、彼も年下の従兄弟のトミーと仲良くなり明るくなった。