邂逅 再びカリフォルニア州 9
牛を飼っている農場を見せる、と言って彼は瑤子を促した。
農場はそこから二十分ほどのまだ田舎にあった。
彼は鎖で閉められた大きなゲートを開けてトラックを乗り入れ、降りてまたゲートに鎖をかけた。
ブラックアンガス牛の群れがのっそり寄って来た。
広い池の水面が光る平坦な野原に車を止めた彼は、先に立って大きな小屋に瑤子を導いた。
中は干し草の良い匂いがして暖かかった。
屋根裏に上った彼らは静かに干し草のしとねに横たわった。
香しい草の匂いが彼等に情熱を蘇らせた。
穏やかに、優しく、互いの傷を労わるように動く彼等に、思いがけぬ歓喜が訪れた。
彼は目に涙を浮かべ、決して自分を捨てないでくれ、と哀願した。
瑤子は無言でさらにきつく彼を抱きしめ、その胸に顔を埋めた。
一週間の旅程は、あっと言う間に過ぎた。
再会を約した瑤子は彼の心配をよそに、二度目の大陸横断を無事済ませ、二学期の勉強に取り組んだ。