Mrs Reikoの長編小説                    

            邂逅 再びカリフォルニア州 7

  頼子が出た。懐かしい彼女の声を聞いて瑤子は涙ぐんだ。

彼女はすぐ、アンディが死んだでしょう、と言ったので驚いた瑤子は、どうしてそれを、と訝った。

ずっと前、オハラ家の消息を聞きに行った夫に、彼らの家を管理していた向かいの店のアルが、アンディはヴェトナムで死に、瑤子の行方は知らぬ、と言ったという。

瑤子は、アンディが二ヶ月ほど前に死に、今はフィリップと暮らしていることを告げた。

一時間も話をした後、頼子は夫が帰ってきたら電話をさせる、と約束した。

二時間ほどして、かすれた声の彼が電話をかけてきた。別れてから二十年経っていた。

彼は自分のかすれ声はバイパス手術の時、長く入れられたままのカテーテルの故だ、と言った。

手術後意識を失った彼は三週間もそのままでいた、とのことであったが、それから五.六年たった現在では、糖尿病はあるが元気で農場を営み、牛や豚をたくさん飼っている、と言った。

そして瑤子に、「会いたい」、としみじみ言った。

懐かしさに矢も楯も堪らなくなった、瑤子だが、今は学校があるので行けぬから、冬休みになったら車で訪ねて行くと、約束した。

車で五日はかかる大陸横断を企てる瑤子に、彼は極力車で来ることに反対したが、瑤子は笑って、「大丈夫だ」と言った。

自動車旅行は気分転換にもなるであろうし、アンディの死後死ぬことを恐れなくなった彼女は、なにが起こっても構わぬ気持ちであった。

四ヵ月後、待ちかねた休暇が来た。

瑤子は愛車の1988年型サンダーバードの点検を済まし、約一週間分の食料を積み込み、出発した。

朝九時頃出発して午後五時頃にモーテルに入る日課を繰り返し、無事に五日目にコロンブス市中に入り、ひとまず近くのモーテルにチェックインした。

瑤子が沖縄に行ってから移った彼等の家への道順に何度も迷ってようやく探し当

てた。

小肥りの頼子が近寄って来て彼女を最初に抱き、夫を促した。それはまるで昨日会ったばかりのような再会になった。

六四歳のグリーソンは、一回り小さくなったようで、白髪の頂点が薄くなっていた。

別れて以来のお互いの生活を語り合い、彼等は瑤子に、ぜひ家に泊まるよう、しきりに勧めた。

それで瑤子は、一応荷物を取りにモーテルに帰ることになった。

また道に迷わぬように、と頼子は夫に一緒に行くよう、言った。

さして遠くないモーテルに着き、部屋に入って荷物をまとめ始めた瑤子に続いて入ってきた彼はいきなり瑤子を抱きしめ、烈しいキスを繰り返した。

その晩、父親よりずっと背が高くなった四人の息子たちとゲイルを交えた家族に囲まれた瑤子は、父親似の子供たちとの賑やかな会話に心が和んだ。