Mrs Reikoの長編小説                    

            邂逅 再びカリフォルニア州 8

 狐狩りを止めたグリーソンは、その頃、ラクーン(アライグマ)を捕っていた。

ラクーン狩は夜、犬を放ってそれを探させ、木に登ったラクーンを、下から懐中電灯で照らして、赤く光る目を狙って撃つもので、十メートルほども上から見下ろす目をライフルで射つことは、なかなか難しかった。

早速、次ぎの晩、彼は瑤子を狩に連れて行った。

途中で待ち合わせた狩仲間と三人で、月夜とはいえ、吠えたける犬を追って野原を歩くことはなかなか難儀なことであった。

瑤子は何度つる草に足をとられ、枝にぴしっと顔を打たれたことであろう。

しかし、ジョージアの月夜は見事であった。

カリフォルニアでは、いつも朝晩海から押し寄せる濃霧で空が曇り、月も星もほとんどその頃見たことが無かった瑤子は、その輝きに魅了された。

その晩は、木に登ったラクーンをどうしても見つけることができず、彼等は家路についた。

翌朝、彼は、農場に置いてある犬達に餌をやりに一緒に行こう、と瑤子を誘った。

寒いだろうからと、頼子はブーツと帽子を瑤子に貸してくれた。

彼女も糖尿で体が弱く、夫と共に野山に行くことをとうに止めていた。

彼の手術後、農場は二人の息子に任されていたが、彼のように几帳面でない息子たちのやり方で、農場は大分荒れている、と彼が言った。

彼の小型トラックが近づくにつれ、一斉に吠え始めた猟犬は十匹もいたであろうか。

彼は毎日彼等に餌を与えるため、少なくとも一度はそこへ通う、とのことであった。

丁寧に餌を混ぜ合わせて一匹づつに与え、健康状態を調べる彼について歩いた瑤子

は、小さな池の端に群がるアヒルや鶏、親豚の後を追って走る子豚を眺めて心から楽しんだ。

犬の面倒を見終わった彼は、黒のタートルネックジーンズの瑤子を眩しげに見て、君の何もかもが好きだ、と彼女の肩を抱いた。

オーバーオールを穿いた彼は一見田舎の好々爺に見えるが、鋭い眼光は昔のままであった。