母と息子のセンチメンタルジャーニー

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彼等の住居で、私の部屋として与えられた部屋は、彼のオフイスにもなっていて、コンピューターや他の物が置かれてあり、彼が時々使用するため入って来る。

それで、私は起き上がる度にベッドを整えなければならない。

これがまた、イヤに背が高いベッドで、クッションが沢山置かれたそれは実にやりにくい。

一日に何度もベッドに横たわる癖のある私は、また一日に何度もベッドを整えなければならない。

えーい、これも運動のうちと割り切って、ベッドメークに精を出していた。

コロナのニュースが毎日テレビの画面を占めるようになった。その頃からアメリカも外国からの人たちの入国を取り締まるようになった。

私はトムが帰ると頑張ったことに、秘かに感謝している。

それはそうと、彼が役員をしている漕ぎ仲間のクラブのチーフは、彼が電話したところ、当分出て来なくて良い、家で待機しろ、と言ったそうだ。

私たちが旅行中に、トムの長女が初産で男の子を産んだ。

トムは彼の孫、私にとっては曽孫に、“当分会いにきてくれるな、”と長女に言われたそうだ。

人一倍子煩悩の彼が可哀そうだったが、どうすることも出来ない。

“トイレットペーパー不足”が巷で叫ばれるようになった。

それを話題にして、バカらしさを笑っている時、“トムは私より沢山トイレットペーパーを使うのよ、”と言った彼女の言葉が、最後通牒のように響いた。

痔疾、湿疹が持病の私は、人より沢山トイレットペーパーを使うことは普段から自認していた。トイレットペーパーの使用量まで監視されては敵わぬ、と言う思いがサッと私の胸を走った。

ジムに直ぐメールして、彼の家に行きたいと言うと、ジムは、迎えに行くと、言った。

まだ1週間しかたってなかったので、シャーリーもトムも一応引き留めにかかった。

いつまでいても良いのに、と言う彼女に、私は、有難う、そんなに優しく言われると、又帰って来るかもしれないよ、と、冗談紛れに言った。

これが有色人種の年寄りの、精一杯の皮肉であることが、彼女に解ったであろうか。

続く