母と息子のセンチメンタルジャーニー

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家中家具がそろっていて、台所などフォークや布巾の類まで、きちんと整頓されて置かれてあり、私がすぐ住めるようにしてくれてあった。

国立公園の近くにある、彼らの別荘の私の部屋にもキチンの物が一応揃えられていて、私はただそこに行って、寝るだけだった。

よろよろと私が外を歩く時は、側にいる限り、サッと寄り添って腕を支えてくれるのは、ジムでなくて、彼女だ。

整理整頓狂の彼女にも慣れて、此の頃は、なるたけ彼女のキチンを乱さぬよう調理するが、なかなか大変だ。

とに角、なるたけ汚さぬよう、すぐ仕舞い込むよう、気をつけているが、ちゃらんぽらんな私にとっては大変な気苦労だ。

早く自分の家に帰りたい。早く汚れ物をシンクに置きっぱなしで明くる日まで、放っておきたい。

家の改装は遅々として進まぬ。特に、コロナ騒ぎで、大工の手伝いは皆失業保険でバケーション中なのか、それとも闘病中、または恐れの為かで、手伝いもおらぬ大工の親方は、煙草をくわえながら、なんだかたまにコンコンやっているが、外見は私たちが帰って来た時と変わらない。

ここが耐えがたくなって、どこかに行きたくても、外出さえ容易でない私が敢えて出て行っても、ホテルは殆ど閉められ、病院に代わっている所が多い。

ホームレスでさえ、今は殆どそのようなホテルに収容されて、今はうっかりホームレスにもなれない。

ま、運命に従おう。運命に従順になることが、今の私にとって、最上のストレス対策かもしれない。

           完