チャボ物語

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雪のように真っ白で、大人の両手にすっぽり入ってしまうような、雄と雌のチャボが、この家にやってきたのは、北国の長い冬が終わり、草も樹も芽吹き始めた春の一日でした。

れんぎょうや梅がいっせいに花を咲かせ、たんぽぽや、いぬふぐりの黄色や紫の花が

日だまりに顔をのぞかせて、それはそれは明るくおだやかな日でした。

雄のチャボはチャボ吉、雌のチャボはチャボ子と呼ばれるようになりました。

ここへ来る前のチャボ吉たちは、せまい鳥小屋の中で、おおぜいの仲間といっしょ暮らしていましたが、今日からは広い庭の中でのびのびと放し飼いされることになりました

広い広い青い空、根本をほるとたくさん虫が出てきそうな緑の生垣、空いっぱいに枝を広げているけやきや柿の大木、全てが珍しく面白そうな世界でした。

かこいの無い庭の中で、自由に歩きまわれる生活は、なかなか快適で新しい生活にはすぐ慣れました。

でも、それは昼のうちだけで、夜のねぐらについては、まだ、問題が残っていました。

チャボたちのねぐらには、黄色い三角屋根の小屋が、用意されていましたが、ここがねぐらとして、使われ るようになるまでは、少し時間がかかりました。  続く