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夕方いつものように背伸びをしては、ヒバの木に飛び上がりそうにしたので、ヒバの木を板でかくしてしまいました。
すると彼らは「コ、コココ」と情けなさそうな声を出して、仕方なく地面をつっつき餌をついばむふりをするのですが、また少しすると背伸びを始めます。
ヒバの木は隠されているので、今度はとなりの松の木へ飛び上がりそうになります。
松の木も板で隠してしまいました。
また、「コーコココ」と、やけになって地面をつっつきます。
そうしてるうちに日はだんだん暮れ始め、もう気取って餌をついばんでいる余裕はなくなり、全く慌てふためくという様子でうろうろし始めました。
地面から一メートルくらいの所に、くいで固定された小屋に入りやすいように入口の前に台を置きました。
行き場のなくなった彼らはピョンと台の上に飛び上がりましたが、すぐ、降りてしまいました。
新しい事を始めるのは、いつの場合もチャボ吉の方が先でしたから、飛び上がるのも飛び降りるのもチャボ吉が先にやり、チャボ子がそれに続きます。
二、三度上がったり、降りたりをくりかえしているうちに、チャボ子の方に変化がおきました。
チャボ吉の後に続いて台の上に飛び上がったチャボ子は、例のように、すぐ、下に降りてしまったチャボ吉の後に続く事なく、小屋にヒョイと入ってしまったのです。
とうぜん後に続くと思っていたチャボ子が降りてこないのに気がついたチャボ吉は首を傾け背伸びをしてコ、コ、ココと呼び寄せるのですが、チャボ子は小屋の入口からチャボ吉を見下ろしているだけで、もう降りる気配はありません。
「あなた、ここにしましょうよ、私はここに決めるわ」
と、その眼は言ってます。
「そんなお前、なんだか、おあつらえ向き過ぎてうさんくさいぞ、何かのわなかもしれんぞ、」
「そんな事言ったって、もう暗くなってきたし、ここにしましょうよ」
「そうだなあ、おれもそろそろ眼も見えなくなってきたし、疲れて休みたくなったよ、よし、今夜はここへ泊まろう」
と言うわけでやっと黄色の三角屋根の小屋がチャボたちの新居になったのです。
マイホームも決まり安心して生活できるようになったチャボたちは前にもまして仲良くなりました。 続く