Mrs Reikoのヤンキー老人ホーム体験記

 

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83歳の後家の私は、一昨年の12月まで病気知らずで、主人亡き後30余年の独身生活を謳歌してきたが、突然の激しい眩暈のため救急車で病院に運ばれ、糖尿病と診断され、以来5日間の入院後、それまで住んでいたマンション二階の住居に帰ってきた。

元気な時には快適な独り暮らしだったが、持病を持つ老人の独り暮らしは何かと不便も多い。

思案の末、独り暮らしをギブアップして、いわゆる老人ホームにわが身をゆだねる事にした。

 老人ホームといっても、まあまあ中クラスの有料ホームで、有難いことに主人が残してくれた年金で何とかまかなえる所だ。

アメリカ流に言えば、Senior citizens retirement home, つまり有料老人ホームだ。

ホームの名前は、Pacific pointeだが、私は略してP.P.と呼び、孫たちを笑わせる。

PPは、Pee pee, つまり、オシッコのことだ。

 以前はホテルだったとかで、部屋は180余あり、見た目はなかなか堂々たる構えだ。ホテルのインテリア・デコレーションをそのまま引き継いだものと見え、壁にかけてある絵画、調度品等もたいへん立派だ。

 大きな窓がある南向きの部屋に入室した。

眼下には二階建てのアパートが三棟ほどあり、あまり見栄えはしないが、はるか遠くは、メキシコのティファナの山々が望める明るい部屋で、冬は陽が当たり暖かく、夏涼しいこの土地では冷房も要らぬ、快適な居場所だ。  続く