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それまで私は図書室で読んでいた新聞はホームが購買しサービスとして住民に提供しているものとばかり思っていた。

そこの壁には新聞は持ち去らないで という紙が貼られてあった。

部屋に持って行かず隣りの図書室で読む分には差し支えないだろう、と思っていたのだ。

道理で新聞の上部の隅に赤いペンで番号が書いてあったそれは部屋の番号だったのだ。

ここをホテルと勘違いして新聞はサーヴィスだと思っていたのだ。

それならそうと言ってくれれば良さそうなものを、と、三週間以上も犯行を重ねていた犯人は考えた。

どうもこのホームの主義は“事を荒立てない”と言う事らしく、何でも笑顔でハイハイと言う割には実行されないことが多い、と言う事が後で解った。

私は自宅に居た時電話とインターネットで息子達と通信していたが、ここに入ってからはまだインターネットも通じていない。

ケーブル会社にテレビ放送を委託すれば、電話もインターネットも同時につけてくれるが、それをやらない私は今のところ息子達との連絡は図書室にある旧式なコンピューターでEメールを交わす以外、オフィスに一台ある電話を使うことしか出来ない。

たった一台の電話は忙しく、いつも誰かが使っている。

それであまり使われてないコンピューターで必要な事をメールする。

壁にはコンピューターの使用は一回30分がリミットと書かれた紙が貼られている。

メールに30分もかけぬかけぬ私は時々Words With Friends という言葉遊びを息子と

とりかわす。

ある日一人の婆さんが来て「いつまでやってるの?」と聞いた。慌てて「もう終わった」と言い席を譲ったが、そんなに長く座ってなかったと思い、改めて婆さんを見ると、どうも見覚えのある婆さんだ。 続く