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あちこちの病院を追い立てられた揚句、最後には医師さへ治療を拒んだため、家に連れてきて最後を看取った、と言う。
恐怖からの激しい差別の上、息子の死を見つめながらの生活はどんなにか辛かっただろうかと同情に耐えない。
ご主人は?と聞くと、ずっと前に離婚していたとの答えである。
ナンシィの過酷な打ち明け話に言葉もなく黙り込んでいたら、突然シャーリィが、
「私のハズバンド宛てに日本のガールから手紙が来た」と話し出した。
彼女は二度結婚して二度離婚している。最初の夫の許に手紙は来たそうである。
「それで貴女は離婚したのね、そのガールのために」
「いんや、ボーイのためだ」私達は吹き出した。
カミング・アウト(同性愛告白)が公けになったのも丁度その頃であった。
結婚後30余年などと言う男女がそれぞれの相手に告白し、家族を置いて去る、と言う事がに日常であった。
ナンシィと私は仔細を聞く事もせず、笑いで会話を終えた。
澄ましてコーヒーを啜る小柄のシャーリーは4人の子持ちだ。
丁度reunion(家族再会)のため集まった子供達は皆、6尺豊かな美丈夫で、料理が嫌い、と言う彼女にしては上出来だ。
その中の一人は近くにあるレストランのマネージャーをしているとの事だが、殆どランチしか食べに出て来ないシャーリーに、たぶん弁当の差し入れをしているに違いない。
続く