Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

 翌日市場に送る豚をトラックに積みこむ仕事も今日中にやらなければならない。

板で囲った通路の後ろから、男たちが大きなブリキ板を揺すってワラワラと音をたてると、豚共は悲鳴を上げ、先を争って荷台に立てかけられた板を駆け上り、トラックの上で喧しくひしめき合った。

 トーマスが事故の様子を彼らに話して聞かせた。

 「彼女はわりとキュートだった、そして、白人のように白かった」

 「もしかしたら、オリンピックの人かもしれない。ママが知ってるかも」

 デーヴィドが言った。

 「そうかもナ」トーマスは気の無い返事をした。

 キュートであろうとなかろうと、日本人の女に興味は無かった。

 「もしかしたら、日本の女たちと知り合いになって、その中の誰かが結婚してくれるかも」

サイモンが、いたずらっぽく彼を見た。

針金のように痩せた彼は、しかめた様な顔に似合わず、いつも女が身の回りにいた。

交際していた白人の女が妊娠している事が解り結婚したばかりだった。

「ホンとだ、ソフトボールのチームはみんな女だぜ」

泥を跳ね上げて歩いて来たデーヴィドが怒鳴った。

 コロンブスソフトボールの試合会場となり、キクは日本のソフトボールチームの通訳のボランティアだった。

 「ママはオリンピックに関わらなければ良かったんだ。家で仕事が山ほどあるというのに。人ごとに関わってる暇なぞ無いんだ」

トーマスはまたグチを言った。

彼は母親がボランティアのために自分のランチを作る暇が無くなるのを怖れた

そうなるとトーマスは、スーパーから豚の餌のため貰い受けてきた、古いパンやチップスを食べなければならなかった。