Mrs Reikoの短編小説「ジョージアの嵐」

 

 雹は止み、雨も大分おさまっていたが、風は相変わらず強かった。

空のトラックが吹き飛ばされそうな強い風に向かい、両手でハンドルをしっかり握った

道路わきの樹木から吹きちぎられた枝葉が、ハイウエイのいたるところに散らばり、路上の白線が見えぬほどであった。

巨大な松の木が真ん中から折れて、その下の小屋を真っ二つにしていた。

アトランタに向かう国道185号線には、ほんの数えるほどの車しか走っていなかった。

道路上の大きな枝葉を避けて運転したトーマスは、水溜りにも気をつけなければならなかった。

ワイパーは息も絶え絶えのように軋み、フロント・ウインドウに絶え間なしに張り付くゴミを押しやった。

突然、前を走っていた白い車が道路端に突進し、低い土手を滑り落ちながら二度横転して止まった。

 “My god!”

 トラックを止めたトーマスは、運転席側のドアを下に、不安定に大きく揺れる車のそばの道脇に降り立った。

車のエンジンは止まっていたが、タイヤがゆっくり宙で回転している。

彼は滑らぬよう気をつけながらスロープを下り、ガラスの割れた窓から覗きこんだ。

 若い女がドアにもたれていた。

目は閉じているが、出血は見当たらなかった。トーマスは女が軽く呻くのを聞いて、さらに覗き込み、大声で叫んだ。

 “Are you okay?”

 答えはなかった。

閉ざされた瞼が痙攣し、また呻き声が唇から洩れた。

車が倒れるのを怖れて、トーマスは、ドアを開けて彼女を救い出すことができなかった。

 「今、助けを呼んで来る」

 叫ぶと彼は土手を上った。