Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁

      障害児の娘 ジョージア州 1

一年間の講習を終えたアンディに、ジョージア州のフォートべ二ングに勤務するよう命令が出た。

とうに売り払ったウィリスの代わりに買った二台の中古車、ジープ、ステーションワゴンと、シヴォレーの二ドアを持って移ることになった。

瑤子専用のシヴォレーは、その頃、もう必需品となっていた。

後部にトレーラーを付け、男の子たち二人を乗せたステーションワゴンを、アンディが運転し、エミイとポールを乗せたシヴォレーを、瑤子が運転して、彼らはジョージアに向かった。

一九五五年の十一月であった。

アンディの車の後ろについて、カンサス州の山地を走っていた瑤子は、坂道を登りつめた彼の車が突然左右にクネクネと大きく揺れ、後部のトレーラーの重みに引かれて、かろうじて立ち直るのを見た。

次の瞬間 坂を上がった瑤子の車が同じ場所でスリップした。

車は道を反れて道路脇の溝に向かって突進し、勢いあまって、五メートルほどの高さの土手を上り始めたが、中ほどでクルリとUターンして、ドシンドシン跳ねながら道路に戻った。

前部のシートにいたエミイはそれほど衝撃を受けなかったが、後ろのシートに寝かされていた生後六ヶ月のポールは、車中あちこち飛ばされたが奇跡的に無事であった。

シートベルトなど、まだ考えられもしなかった時代であった。

瑤子が外に出て道路を調べてみると、道路の表面に薄い氷が張っていることが解った。前夜にでも降った雨水が、坂道では流れてしまい、平らなその場所でそのまま凍ったものと見える。

薄い氷は近寄らねばよく見えず、運転している者には思いもかけぬものであった。

早朝のことであり、他の車が走っていなかったので、事故はその程度で済んだ。

引き返して来たアンディは、車が半分道から落ちそうになっているだけなので、彼女の一瞬の恐怖に考えも及ばず楽天的であった。

ちょうど来合わせた土地の男二人が、トラックで車を引き上げてくれた。

ジョージア州コロンブスという町に着いた。