Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁

             再びコロラド州 3

ポールを連れて退院してから、相変わらず子供たちの世話に明け暮れしていた瑤子は、ある日新聞で、“ハイスクール卒業免状獲得”という広告を見て、早速電話した。

中年の男が訪ねて来てコースは全部で140ドルだ、と言った。月賦の嫌いな瑤子であったが、その時だけはアンディを説き伏せてコースを買った。

一週間ほどして届いた小包にはたった三冊の本が入っていた。

また騙されたのだ。

しかし、英文法の本一冊だけは、瑤子には解りやすくて非常に役に立った。

夜、子供たちが寝静まり、アンディが宿題をしている傍らで、瑤子も文法の本を開いた。

 フォートカールソンから夫と遊びに来た博美に思わず、「わーっ、メンコイこと!」と言わせたポールを、エミイは人形のように抱きたがり、彼女が目を覚ましている間は一時も油断がならなかった。

そのようなエミイをキイキイ声で怒りつける瑤子ではあったが、博美の夫のサムが四歳のジェーンをパンツに血がつくほど叩いた、と聞いて恐ろしく思った。

その時、どんなに腹が立っても子供を無節制には殴るまい、と彼女は心に決めた。

小学校一年生のエミイとスクールバスが同じで、二歳ほど年上の男の子が家に遊びに来るようになった。

その子は女の子の玩具で遊びたがり、身の丈六十センチほどのウエディングドレスを着た、エミイの大きな人形に執着して、自分の家に持ち帰ってしまった。

分不相応な金を出してエミイにそれを買ってやった瑤子は、彼の家まで行って取り戻して来なければならなかった。

他の子供たちには、それほど高価なものを買ってやったことがない瑤子は、叱ってばかりいる、エミイに気がとがめ、自己嫌悪に陥ったり、将来に不安を感じたり、胸が押しつぶされるような憂慮に駆られて、つい甘やかしてしまうのであった。