Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁       

           障害児の娘 ジョージア州 2

彼らは真っ先に知人のグリーソン曹長の家を訪ねた。

グリーソンも妻の頼子も日本からの顔見知りであった。

彼らとオハラ夫婦は趣味も違い、その頃は本当に顔見知り程度であったが、コロラドに住んでいた友人夫婦に、彼らの住所を教えられ、その時から文通が始まっていた。

愛想のいいグリーソンと穏やかな性質の頼子は、喜んで彼らを迎えてくれた。

グリーソンは、ちょうど知人が引っ越した後、という空き家に案内してくれて、ともかくその晩は彼の家に泊まれ、と薦めた。

同じ年頃の四人の男の子たちとすぐ仲良しになったオハラ家の子供たちは、大喜びで早速彼らと外へ遊びに行った。

日本語が相当できたグリーソンは、瑤子を“オクサン、”と呼び、オクサンは魚が食べたいだろうからこれを持ってきた、と言って、どこから持ってきたのか、大きな魚を瑤子に見せた。

大人四人と子供八人の大人数は一緒にテーブルにつくことができず、男共と子供たちが食べた後、瑤子と頼子が食事する時には、魚は見るも無残に骨ばかりになっていた。

早く自分の家が欲しい、と思ったが、いろいろの手続きのため、もう二日そこに泊めてもらうことになった。

絨毯の上に敷いたキルトの上の雑魚寝に、子供たちは大喜びであった。

グリーソンは本当に調子の良い男であった。

ミシシッピー生まれの彼は、ハンティングが大好きで、そのための犬を何匹も裏に飼っており、軍の仕事以外は犬の世話に明け暮れしていた

角張った顔の眼鼻の大きな彼が表情たっぷりに、“ホンデネカー!”(そうじゃないか?)などと日本語の方言を混じえてする話しは実にユーモラスで、アンディも瑤子も涙が出るほど笑った。

妻の頼子は目鼻立ちのハッキリした大柄な女性で、日本では美人の一人に数えられていた。

温厚な彼女は、気の短い夫と四人の子供たちに対して怒る、ということもなく、おかずがなくても気にとめる風もなく、少量の漬物でのんびりご飯を食べる、という具合であった。