Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                

       狩猟    ジョージア州 11

家の修理を終えた彼は、庭に小さな畑を作り蕪の種を蒔いた。

蕪の葉は青々と茂り、その葉を摘むことが瑤子には小さな喜びであった。

蕪はアメリカ南部ではその根より葉のために栽培され、冬の野菜としてどこの家でも作られていた。

種さえ蒔いておけば自然に育つ蕪の葉は、柔らかく美味で本当に重宝な野菜であった。

幼いポールを相手に畑仕事をしたり、一緒に風呂に入ったりして、アンディは良い父親であった。

人に頼まれるとイヤと言えぬ彼は、瑤子には利用されているとしか思えぬほど、近所の人たちにもつくした。

古いながら二台の車を持っていた彼は、その一台を引越しする近所の者に貸し、ガソリンをみな使われて空で返され、腹を立てたのは瑤子であった。

グリーソンがミシシッピーに発つ前に借りておいた家に、電気や水道を引いたりすることを頼まれていた彼らは、掃除などもしておいてやろうと、ある日、親子三人でその家に行ったが、その家の前の五.六段の階段で、アイスティ―のガラス瓶を持った瑤子が転んで倒れた。

腕にガラスの小さな破片が突き刺さった瑤子を、アンディはすっくと抱き上げて車に入れ、家に連れて帰った。

病院にも行かず、破片を抜き取った後の傷はその後すぐ癒えたが、それから暫くして小さなガラスの破片が皮膚の表面近くに出てきて手に触るようになり、病院に行った瑤子の腕を医者は切開して破片をつまみ出した。

 最近小肥りの頼子と、最後にようやく生まれた女の子を含めた五人の子供たちを連れてグリーソン一家が移ってきたのは、それから間もなくの事だった。

子供達も直ぐ仲良くなり、又親しい行き来が始まった。

彼が退役してミシシッピーに帰ってから生まれた、彼に良く似たゲイルは自慢の女の子であった。

彼はその子と頼子を連れてよくオハラ家を訪ねて来た。

そんな時も、相変わらず瑤子に親愛と憧憬のまなざしを送ることを忘れず、瑤子を困らせた。

ある日、彼は友人のホッジスの犬のウサギ追いを見物に行こうと一家を誘った。

オハラ一家は近所の野原に、彼の知己のホッジスの、犬のウサギ追いを見物に行った。

白、黒、茶のまだら毛の、愛嬌のある顔のビーグル犬たちがウサギを藪から嗅ぎ

出して、ウォーン、ウォーンと、良く透る声で吠えながら、大きな円を描いて逃げる

ウサギを追うのは、なかなか興味あることであった。

“犬博士”のグリーソンは、数頭いる犬の声を聞き分けて、「あれはジョーだ、」とか、「トムの声が遠くなったから多分なにか別のものを追ってるかも」と説明した。

それからほどなくして、グリーソンの狩友達のホッジスが転勤することになり、グリーソンが熱心に推奨する血統書つきの犬二匹をアンディが買うことにした。

彼は庭の隅にドッグ ペンを材木とワイヤーで作った。

雌雄二匹の雌の方は、家の中で飼われていたものと見え、いろいろな芸をするので、子供たちが喜んで家の中に入れて遊び相手にしたがったが、ある日来たグリーソンが、人間相手にしていると猟をしなくなる、とムキになって反対したので、それからは猟の演習以外にはペンの中から出さなくなった。