Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                       

               狩猟    ジョージア州 12

就職した牛乳会社で、始めはトラックの運転手として働いていたグリーソンは、やがて夜間の管理人になり、夜の十一時から朝の八時までの勤務になった。

一時間ごとに工場内を見回って異常の有無を調べる仕事は、ほとんど場内を歩き回るだけであった。

朝帰宅してすぐベッドに入り、午後起き出す彼には、それから勤めに出るまでの暇があり、相変わらず頼子とゲイルを連れてよくオハラ家を訪ねて来たが、たまには一人で来て、犬たちを運動と訓練のため野原に連れ出し、ウサギを追わせた。

始終留守がちなアンディは、折角買った犬を 世話するだけで、ウサギ狩りに連れて行く暇もなく 時は過ぎて行った。

たまにグリーソンについて行って犬たちの行動を見物した瑤子は、狩猟に興味を持ち始め、とうとう免許を取って彼と狩猟に行こう、と決心した。

幸い近くのフォートべ二ングには何千エーカーという演習場があり、許可さえ受ければ一定の場所で狩猟ができることになっていた。

ウサギ狩りに行く、という瑤子に、ちょっと驚いたグリーソンは、笑いながら、「本気か」と聞いた。

それから話はトントン拍子に進み、先ず免許を取らなければ、ということになった。

アンディはまた留守であったが、なにかに熱中していなければいられなかった瑤子は気にも留めなかった。

フォートべ二ングの狩猟管理事務所で、軍人家族の無料免許を取る瑤子は、珍しいもののように扱われた。

女のハンターはほとんどおらず、その上東洋人であったので、奇異に思われたのも無理はなかった。

珍奇に扱われるのには慣れていた瑤子は、ただ白いカードの免許証を手にした時

これから始まるハンターという未知の世界を想像して胸を躍らせた。

二.三日後、幼稚園から帰ったらみていてあげる、と快く申し出て、ゲイルを連れて来た頼子にポールを託し、瑤子はアンディが一、二度鹿狩りに持って行った十二ゲージのショットガンを担いで、グリーソンの車に乗った。

ただでさえ癇癪持ちのグリーソンは、経済上、自分で犬が飼えぬため苛立ちやすく、頼子はホッとしたような表情で二人を見送った。