Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                      

               道ならぬ恋     ジョージア州 17

グリーソンは、しばらく姿を見せず、電話もかけて来なかった。

寂しさに堪り兼ねた瑤子は、工場に行って彼の車の脇に車を止めて待っていると、相変わらずニコニコと小躍りして来る彼の姿が見え、彼女も思わず、ニッとした。

何事も無かったように彼女を抱きしめた彼は、「あまり頻繁に行くからだ」と頼子に言われた、と言った。

一人で行った狩りの話しを瑤子がすると、呆れ返った彼は「バカ、ノータリン」と罵倒した後、「もう絶対に一人で行くな」と命令した。

懲り懲りの彼女は、その時ばかりは素直にウンウンと頷いた。

小さい時から大自然の中で育った彼は、野原や森の中で迷うことが無かった。

グリーソンが、珍しく釣りに行こう、と男の子たち三人を乗せた車で瑤子を迎えに来たのは、その一週間ほど後のことであった。

友人のカーターも行くんだ、と言って彼がカーターの家の前に車を止めると、カーター夫婦の諍いの声が車で待っていた彼女にも聞こえた。

平気な顔をして出てきたカーターが車に乗り込み、一同は湖に釣りに行ったが、グリーソンは後で、カーターの妻は瑤子と一緒に行くのを快く思っていないようだ。と言って笑っていた。

その頃彼は、もう犬は飼わない、と誓ったことも忘れたように、狐狩りのための大きな犬を数頭飼っていた。

なぜか狐狩りは夜行き、彼が休みの夜、仲間と共に犬を連れて車で一時間ほどの田舎に行き、放った犬たちを一晩中車で追い、その鳴き声でどの犬が優秀かを仲間と競い合う、というもので、銃を使う猟ではなかった。

ウサギのように狐も円を描いて逃げるので、大体狐が飛び出した辺りで待っていればよかったが、彼らはウサギより遠くまで行くので、帰ってくるのに時間がかかった。

相変わらず調子の良い彼は、知り合いになった地主の誰彼と話しをつけて、彼らの広大な土地で狐狩りをした。

隣の州まで行ってしまう鹿など追いかけて行った犬を捜しに、彼はよく瑤子を連れて行った。

二人は時々古い小屋の干草の上で愛し合った。

良い匂いのする枯れ草の上の情事は、二人を子供のようにおおらかにした。