Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                           

           同情的転勤 カリフォルニア州 2

 留守家族は官舎に続けて住むことができる、と言われて、近くの観光地の高い借家に移転しなくて済み、瑤子は安堵したが、アンディが出発した後、またなにもかもが瑤子の肩にのしかかって来ることが目に見えていて、彼女の心は重かった。

アンディが発って二ヶ月ほど過ぎたある日、基地の最高司令官から手紙を受け取った。

手紙には、もしエミイの乱行を止めさせることができぬなら、一家は基地から立ち退かなければならない、とあった。

手酷い打撃を受けた瑤子は仕事にも行かず、一日中座ってタバコを吸い続け、考えこんでいた。

エミイには絶対外に出てはならぬ、と言って、ショットガンを膝に戸口で見張った。

三日三晩考え続けた瑤子は、意を決して、軍の牧師のオフイスを訪ねた。

それまでにも困ったことがあった時、牧師が面倒を見てくれた、という話しを聞いていた彼女は、そこに望みを託したのだ。

面を被ったように無愛想な牧師は、無宗教の瑤子に、そういうことは、赤十字社に行って言え、と指示した。

赤十字の親切な男は、もしアンディを帰してくれなかったら、エミイを殺して自分も死ぬ、とさえ言う瑤子に、あんたは今までにも充分我慢した、と慰め、瑤子が見せたエミイに関する書類を読み、「施設に入れる事は考えなかったのか」、と言った。

そして、すぐ朝鮮のアンディの部隊に通知して彼を帰すことに尽力する、と約束してくれた。

一週間もせぬうちにアンディが帰って来た。

瑤子は喜びと安堵で、全身から力が抜け立ち上がれない程であった。

「同情的転勤」の指令を受けて、彼はまたフォートオードに廻されたのであった。

そのまま続けて住むことを許された家には、仕事を辞めた瑤子がいつもおり、アンディも仕事以外は家にいたので、エミイは少し鳴りを静めていたが、ある日、基地外の町で兵隊と車で寝ていたところを、ポリスに見つけられ、男は、未成年の彼女と一夜を過ごした、というかどで、“制定法上の強姦罪”で検挙された。

それは約七年の実刑の判決が下るかもしぬ重罪であった。

たった一夜で大変なことになった彼は、最終的に彼女と結婚する、と言って起訴を逃れた。

結婚式の当日、瑤子は、廊下でバタバタしている彼らを無視し、ベッドルームに閉じこもっていた。

起訴逃れのための結婚式などに出席する気になれなかった。

アンディは瑤子になにも言わず、エミイに二十ドルやって服を買わせ、教会の式にも出席した。

エミイが男の故郷のオレゴン州に行って、やっと一息ついた瑤子は、G―2という新兵たちの身元調査の書類を作るオフイスで働いていた。