Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                                   

                帰郷  沖縄 5

 ある晩、エミイとポールを連れて映画を見に行った瑤子夫婦は、そこでワイフ同伴の

ホーキンス少佐と出会った。

瑤子が家族を紹介すると、少佐は、瑤子が軍政府で働いてくれて喜んでいる、と

アンディに言った。

「たいしたこともできないで」とアンディが言うと、「なに、そのうち慣れるさ」と少佐は彼女にウインクした。

翌日、オフイスで、きれいな子達だねと、子供を持たぬ少佐に言われ、瑤子は複雑な思いで礼を言った。

彼女のFBI調査の書類に、推薦の言葉を丁寧に書き込んだ、と言うグリーソンは、その後も彼に似合わぬ特徴ある美しい文字で、オハラ一家に手紙を寄こしていた。

今度は、船を作る、と言い出したアンディは、近所の小さな造船所にスペースを借り、長さ十メートルほどの釣り船を、漁師に教わりながら作ることに夢中になっていた。

瑤子の収入のため、あまり倹しくしなくても暮らせるようになっていたので、彼女は彼の勝手にさせておいた。

彼は働く瑤子の良きパートナーであった。

家の仕事は、皿洗いから掃除機をかけることまで、ほとんど彼がして、一ヶ月に一度、冷蔵庫の解氷までして中を綺麗に掃除してくれた。

相変わらずエミイの悩みは続いていたが、瑤子にとっては、心安らかな生活が続いていた。

一家が沖縄を去る時が近づいてきた。

アンディは乱行の止まぬ十五才のエミイに、日本で不妊手術を受けさせよう、と言い出した。

最初は驚いた瑤子も、エミイの妊娠を酷く恐れていたことは事実なので、直ぐ賛成した。

エミイが男と遊び歩くことに今更倫理性を説く権利は無い、と自覚する瑤子ではあったが、彼女が妊娠したら、と思うと背筋が寒くなるのであった。

堕胎はもちろん、未成年に不妊手術を受けさせることは、どんな理由であれ、アメリカでは厳しく禁じられていた。

その頃、もうエミイは、ほとんど毎晩出て歩いて、帰って来ぬ夜が始終であった。

二年半ほどの沖縄生活を終え。いよいよオハラ一家が沖縄を発つ日が来た