Mrs Reikoの長編小説                             

                    慟哭 再びカリフォルニア州 15

空軍からポールの死因のリポートが届いた。

それによると、彼は自分の部屋で縊死したようであった。

調査が長引いたのは遺書も無いため、自殺と断定するのに時間がかかったようであった。

彼の周辺を徹底的に調査した上でのリポートであった。

彼の友人たちは皆、彼を褒め、対人関係や車両整備の職務にもなんの非もなかったようだった。

階級が上がり、個室を許された事も仇となった。

父親似のポールは白人に近い顔立ちをしていたので、一見、東洋人との混血に見えなかった。

容姿良く生まれながら引っ込み思案で兄たちと違って友達も多くは居なかった。

折角活発な従兄弟のトミーと仲良くなれたのに、すぐ彼の死に会い、何も言わなかった彼の心痛を瑤子は思いやった。

父親の病気は知らされたが、まさか死ぬとは思っていなかったかも知れぬ彼に届いた死亡通知も、ショックであっただろうし、どんなに彼が嘆いたか、計り知れなかった

内気なポールの寂しさを思いやって瑤子は泣いた。

考えて見れば、他の子達と違って、彼だけは一度も叩いたことがなかった。

おとなしく、悪さをしないので叩く必要がなかったのだが、兄弟たちが叩かれるのをどういう目で見ていたのだろうか。

彼のブリーフケースの中に、マンションの住所を知らせた瑤子の手紙と、エミィからのクリスマスカードが、大事そうに収められていたのを見た彼女は、声を上げて泣いた。

そして、彼にクリスマスカードも送らなかった意固地な自分を呪った。

もし彼女がクリスマスカードを送っていたら、彼は寂しい思いをしなくても済んだかもしれない、と思うと堪らなかった。

フィリップは何かプレゼントを送ったそうで、彼のガールフレンドは、死の少し前にポールからかけて来た電話で話しをしたと言い、その時彼は、ガールフレンドの話しをしていた、と言った。

アンディが生きていたら、ドイツに行ってもっと詳しく調べられたであろうと思ったが結局、愛する末子の死に会わなかった彼は幸せであった。