Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁                            

                      アメリカ上陸 5

目立った苛めかたはしなかったものの、姑は時々瑤子の胸をつく言動をした。

アンディの姉のルーシィが二人の男の子の後、初めて女の子を産んだ時、大喜びした彼女が、「私たちの初めての女孫だ」と瑤子に告げた時、今更ながら自分とエミイの立場を知らされた思いで、彼女は愕然とした。

電気やガスの経費は全部折半とし、瑤子は二階の小さな部屋に電気コンロを置いて、自炊することになった。

瑤子はその部屋の戸棚に自前の食料や日用品を貯蔵していたが、ある日、母親が

のっし、のっしと二階まで上がってきて、エミイに食事を与えていた瑤子の目の前で戸棚を開け、新しい粉石けんの箱を取り出して、「いつでも使っていいって言ったね」と言ってそれを持ち去った。

手付けの金を瑤子たちが全額出し、以後の月賦は半々という約束で買った、その頃出始めたばかりの自動洗濯機が階下に置かれ、たまたま洗濯していた瑤子がそこにいつも置いておいた石鹸を、使ってもいいよ、とお愛想に言ったことがあった。

また、ジョージアナはよく瑤子とエミイが風呂に入っている時ドアを激しく叩いて、今すぐトイレを使わなきゃならない、と入ってきて、トイレに坐って裸の瑤子をジロジロ眺めた。

五百マイルほど離れたフォートミードで勤務するアンディから度々電話がかかってきたが、その度に瑤子は、淋しい、早く会いたい、と告げた。

彼は笑って、ラジオでもつけたら、と言った。

 ある朝、ハイチェアに坐ってオートミールを食べていたエミイが突然ひきつけた。

白目を出して痙攣する子を見て瑤子は驚愕し、「ママ、ママ!」と叫んだ。

寝室で昼寝をしていた母親が出てきて、すぐ階下に行き、隣りのミセス シモンズに電話した。

父親が車で勤めに出た後であったので、ミセス シモンズがリッチモンドの病院に瑤子たちを連れて行ってくれた。

意識の無いエミイを丁寧に診てくれた若い医者は、高熱のためのヒキツケだから、「連れて帰って水風呂に浸けろ」、と言った。

あまりにも乱暴な療法に驚いた瑤子であったが、家に帰ってから言われた通り、一定の時間ごとに彼女をほとんど冷たいぬるま湯に浸けた。

エミイが眼を開けたのは翌朝十時頃であった。

ひきつけてからほとんど二十四時間経過していたが、眼を開けた途端、彼女は活発に動き出し熱も下がっていて、以前と変わった様子がなかったので瑤子は安堵した。