Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                          

      アンディの故郷 ヴァージニア州 1

サリナスの家は住んで見ると次から次と欠点が現れた。

第一に水が悪く、プラスティックのパイプを通ってくる、三十メートルほど崖下の井戸から汲み上げる水は酷い硬水で、軟水タンクを通さなければ使えず、タンクに入れる塩に多大な金がかかった。

その他、人里離れた場所のため用心が悪く、一度、無人の時、泥棒に入られたこともあり、麻薬中毒の男などが毎日のように事件を起こしていた。

その頃、ヴァージニアに住むアンディの姉が度々電話をかけて来て、老いた両親のことで彼らに援助を求めていた。

ヴァージニアの美しい風景を好む彼女は、「いっそのことヴァージニアに行こう」、とアンディに持ちかけた。

彼も治安の悪く住みにくい場所で有った事や、子供達がドラッグにはまることも恐れ、ヴァージニア、行きを賛成した。

家を売りに出した二人は引越しの準備を着々と進め始めた。

ポールは中学をその五月に卒業する筈であった

フィリップは高校の最後の一年をヴァージニァで過ごすことになった。

ロバートは、ガールフレンドのダイアンと同棲しながらサリナスの短大の一年生を終えるところであったが、二人共、働きながら学校に通っていたので、心配することは無かった。

幸い家はかけた費用の二倍に売れ、その年の七月に彼らは、シボレーのヴァンに二人の子供達と、シェパードのハッフィを乗せ、ヴァージニアに向かって旅立った。

政府は退役軍人の引越し荷物はアメリカ中、どこにでも無料で運んでくれた

途中、グランドキャニオンや、プエブロのインディアンの古代住居などを観て通った彼らは、コロンブスにも立ち寄った。

子供達は昔通った学校や、住んでいた家を懐かしそうに見て、隣の老婦人の家にも顔を出した。

母親はとうに死んでいたが、脚を患う車椅子の娘が家政婦のへレンとまだ住んでいた。彼女達は瑤子を見て、相変わらずきれいだ、とお世辞を言った。