Mrs Reikoの長編小説                     

             再びカリフォルニア州 2

友達のいない瑤子は、沖縄で再会した後、文通をしていた、当時テネシーに住む

博美に勧められるまま、新興宗教の会合にアンディと出席した。

多くの信者が親切にしてくれたが、瑤子の性質はその宗教に合いそうになかった。

沖縄で勧められた時、瑤子と一緒に笑って馬鹿にしていたその宗教に、博美はすっかり傾倒して、夫のサムと共に一家で信仰していた。

アンディは、案外素直に会合に出席したり、信者たちと野球をしたりして楽しんでいた。

メキシコがすぐ近くなので、何かの役にたつかも知れぬと、瑤子は高校の夜学でスペイン語を勉強し始めた。

アンディも同じ学校の不動産のクラスに通って、友人も二、三人できたようであった。

瑤子は既に高校卒業の資格を取り、モントレィの短大の単位も一年分ほど取っていたが、それ以上大学を続ける気は無かった。

すっかり世の中から引退したような瑤子は、免許を持っていても運転はアンディに任せ、買い物もアンディに殆ど任せきりで、本を読んだり、俳句の会に出席してみたりする傍ら、庭の仕事にいそしんだ。

大工仕事の好きな彼は掃除機をかけたり垣根や芝生を刈ったりするほか、炬燵のやぐらを作って友人たちに売ったりもした。

エミイがラーリィという男と結婚した、とオークランドから電話をかけてきた。

若いのに知能犯のようなその男は、彼女に度々電話をかけさせ、なんとかしてアンディから金を引き出そうとしている気配が伺われた。

とうとうエミイはある日、不妊手術を受けさせたアンディを訴える、と言ってきた。

その頃、親を訴たえる子供が多くいて、なかには十歳にもならぬ子供の訴訟を引き受ける弁護士もいた。

そのようなことを思いつく才覚もない彼女を、ラーリィがけしかけたことは明らかであった。

珍しく激怒したアンディは、そのようなことをしたら、彼がエミイのために掛けてある保険を解約する、と脅した。

保険というのは、もしアンディが先に死んだら瑤子が受け取る年金を、瑤子亡き後、障害者の彼女が受け取れるよう、現役の時、彼が手続きしたものであった。

さすがに訴訟のことは言わなくなったが、それからも彼女は頻繁にコレクトコールをかけてきた。

その頃の通話料は高く、ましてコレクトコールはなおさらであった。

瑤子は電話に出なくなったが、アンディは相変わらずコレクトコールに応じるので、彼女は苛立った。