Mrs Reikoの長編小説                                   

          オリンピック 再びカリフォルニア州 19

食事の世話をしてやる、とは言ったものの、掃除までしてやる、とは言った覚えの無い瑤子はある日、自分の荷物を車に積むと、近所のアパートに部屋を借りて移った。

広い芝生と池のある、エアコン付きの洒落たアパートは彼女の気に入り、ノビノビと暮らせた。

その頃、新聞で一九九六年の夏季オリンピックのためのボランテヤ募集の広告を見た彼女は、応募して見た。

後日、ちょっとした英文法と即時通訳をテープに吹き込む試験をして、彼女は採用されることになった。

競技はまだ来年のことであったが、その前にコロンブスでは、試験的にスーパーボールと称して、ソフトボールの国際競技を主催することになっていた。

瑤子はTシャツと帽子を支給されて、競技場に手伝いに行った。

バスで来た日本チームを迎えて競技場に導き、主事を勤める退役陸軍少将の言葉を通訳するよう、言われた。

テレビのライトの中、壇上の彼の側に立ち、彼女は同時通訳をした。

日本チームのマネージャーが次に立って、“一生懸命やって我々のパワーを焼き付けたいと思います、”と言った時、瑤子は即時、“我々のパワーを、印象づけたい、”と英訳した。

すると、自国のチームがいつもナンバーワンだと思い込んでいるアメリカ側の観衆が、どっと笑った。

マネージャーを始め、チーム全員は可笑しいことは何も言ってないのに、と瑤子を不審な目で見てそれ以来瑤子の信用は無くなった。

以来、チームの瑤子に対する態度は冷たく、進展のないまま競技は終わった。